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2004/07/28(水)
おいちゃん下条正巳さん 逝く 「男はつらいよ」寅さんファミリーまたひとり…
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映画「男はつらいよ」(山田洋次監督)シリーズのおいちゃん役で親しまれた名脇役の下条正巳さんが25日午後3時55分、すい臓がんのため東京・世田谷区の自宅で亡くなった。88歳だった。本人の遺志で葬儀は長男で俳優の下条アトムさん(57)ら家族だけで済ませた。28日になって訃報(ふほう)を知らされた山田監督、倍賞千恵子ら、寅さんファミリーは動揺を隠せなかった。笠智衆さん、渥美清さんに続いてまた貴重な俳優が、静かに逝ってしまった。
最期をみとったアトムさんによると、下条さんは今年に入って体調がすぐれず、検査入院を繰り返していた。診断はすい臓がんで、告知されていたという。5月1日に都内の順天堂医院に入院し、手術。本人が往診医の医療介護を希望し、住み慣れたわが家で、家族に見守られる中、眠るように息を引き取った。
強い遺志で内輪だけで葬儀をすませ、荼毘(だび)に付された。この日まで寅さんファミリーにも伏せられていた。「男はつらいよ」で下条さんは三崎千恵子(83)と夫婦役を演じた。葛飾柴又・帝釈天の門前で草だんご店を営む寅次郎の叔父おいちゃん。三崎は“夫”を亡くしたショックで寝込んでしまった。
森川信、松村達雄に次ぐ3代目のおいちゃんだったが、14作からシリーズ最後の48作まで続投。ふらりと帰ってくる寅さんを優しく温かく見守りながら、柔らかな口調で時に苦言を呈する独特の味わいと雰囲気を持っていた。
山田監督は松竹関係者から亡くなったことを知らされ「実直、誠実、寡黙、凛(りん)とした古武士のような生き方を貫いた人でした」失意の中で在りし日を思い出していた。
寅次郎の妹さくらを演じた倍賞千恵子も動揺を隠せない。「生前『オレが死んだらバラ一輪あげてくれればいい』と言っていたのに。バラ一輪あげられなくて悲しい。渥美さんもそうでしたが、気づいた時にはもういない。とても寂しい…」
遺族を代表してアトムさんは「在宅での38日間は家族にとっても父にとっても濃密な時間を過ごせた」といい、さらに「60余年にわたり自らに厳しく、真っすぐな役者人生を全うできたことを父、おいちゃんに代わりまして心より御礼申し上げます」と気丈にコメントした。
◆下条 正巳(しもじょう・まさみ)本名同じ。1915年8月26日、韓国・釜山生まれ、長崎育ち。33年釜山一商卒。「映画監督になるつもり」で上京。新協劇団の「マンハイム」を見て感激し、入団。40年解散するが、46年再建。51年劇団民芸に移り、71年からフリーに。夫人は元女優の田上嘉子さん。身長168センチ、体重55キロ。篆刻(てんこく)が趣味だった。
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