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2004/07/10(土)
2リーグ存続へ 全選手が“祈りのミサンガ”
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選手会が夢の球宴に2リーグ制存続の祈りを込めた。サンヨーオールスター第1戦が10日、ナゴヤドームで行われ、全選手が“祈りのミサンガ”を着用してプレー。近鉄、オリックス合併反対の強い決意を全国のファンに伝えた。試合前に名古屋市内のホテルで開かれた労働組合日本プロ野球選手会(古田敦也会長=ヤクルト)の臨時大会では、合併強行の場合にはスト権行使もありうることなどを決議。選手が合併阻止へ1つになった。
もう近鉄のユニホームで、この舞台に立つことはない。岩隈はグラブをはめた左手を見ていた。手首には、12色で彩られたミサンガがあった。
「みんなに見えるように着けます。12球団の思いですから」
受ける城島も、打席に立った今岡の手首にも“祈りのミサンガ”が着けられている。球宴第1戦のプレーボール約5時間前、名古屋市内で開かれた選手会の臨時大会で、12球団のスターたちに古田会長から提案があった。「きょうからのオールスターで、みんなで12球団のカラーを折り込んだミサンガをつけよう」。説明はいらない。“全会一致”で決まった。近鉄・礒部会長、オリックス・三輪会長の胸には熱いものがこみ上げた。
前代未聞ともいえる球宴デモンストレーション。松原事務局長をはじめとする選手会事務局スタッフの発案だった。「12球団でそろって何かしたい。ヘルメットにシールを張ることも考えたが(スポンサー関係などで)問題はある。それならミサンガで」。5日に開かれた労使交渉の場で古田会長の了承を得て、事務局の女性スタッフらの手作りで、12球団のチームカラーを染めたミサンガを60個作り上げた。
選手会は6月13日の合併合意発表から一貫して合併阻止を主張している。労使交渉で特別委員会の招集や1年間凍結を提案したが、議論の対象にもされていない。手詰まりとなっている古田会長ら執行部の支えになっているのがプロ野球ファンの支持だ。12球団の選手がそろってアピールするにはオールスターは最高の舞台だ。同じミサンガをはめることで“合併反対”の心の叫びをファンに届けたかった。
初回に岩隈の前に三振を喫した巨人ローズは「12球団が残ってほしい。このミサンガにその思いを込めるよ」と話し、古巣・ダイエーと西武との合併が有力視されている巨人・小久保も「ファンも選手も同じ野球界の仲間。みんながつながっているという思いを伝えたい」と語った。
試合後、労組選手会の立浪副会長は「ミサンガにするかどうか分からないが、後半戦でも何か考えたい」と球宴後も継続することを明かした。岩隈は勝利を飾った全パのベンチで「来年もセ、パのこういう形でオールスターをやりたい気持ちになりました」と言った。ファンと一体になった熱い思いは1リーグ制に突き進む経営者たちに届くだろうか。
≪選手会臨時大会では≫選手会は現行2リーグ制存続のための提案として、課徴金制度(ラグジュアリータックス)の導入を決議した。同制度は球団が選手に支払う年俸が一定のラインを超えた場合、超過分に「ぜいたく税」を課し、経営難の球団に還元しようというもの。選手が嫌がる年俸抑制につながることからできれば敬遠したい制度だが、2リーグ制維持のためには「痛みを伴う覚悟がある」(古田会長)という点を、経営者側とファンに示すために、決議に踏み切った。また現行協約で1億円以上の選手は30%以内とされている減額制限を、緩和することも決議した。
また、ストライキ権の行使については「ファンのことを考え、できればやりたくない」となお慎重な姿勢だが、今後経営者側との話し合いが不調に終わった場合には「ストライキを行う場合がありうること」を全会一致で決議した。スト権確立の手続きについても話し合われ、12球団選手会が合意することをスト権確立の最低条件とすることで申し合わせたようだ。時期については未定ながら、1軍試合のみのストライキとする案など方法についても検討された。
臨時大会には、選手会に所属する12球団742人のうち582人(出席者30人、委任状提出者552人)が出席。あらためて特別委員会を招集することも決議され、早ければ12日にも経営者側に決議事項を通達することになった。
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