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2004/06/14(月)
<球団合併>球界を揺さぶる激震 交渉の周辺を探る
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プロ野球の近鉄とオリックスの合併問題は、球団関係者に強い衝撃となって駆けめぐった。パ・リーグは存続の危機に追い込まれ、1950年以来、半世紀以上の歴史を持つ2リーグ制は、根幹から揺らいでいる。根来泰周コミッショナーは「これが前兆で、これから本震があるのか、それともこれが本震で後は余震しかないのか」と、今後の展開に不安を隠さない。球界を揺さぶる激震となった合併交渉の周辺を探った。
近鉄の記者会見から一夜明けた14日、根来泰周コミッショナーは「前からニオイをかいでいた」と話した。先週末、オリックスの宮内義彦オーナーが根来コミッショナーに、初めて直接合併の話を報告したが、その時すでに合併の情報はコミッショナーの耳に入っていた。合併話は当該球団の選手、監督やファンにも唐突だったが、一部の球界関係者の間では、かなり前から知られていた。
「今回はきちんと根回ししていた」と、ある球界関係者はいう。「今回は」というのは1月31日に近鉄が持ち出した命名権売却案の失敗例があったからだ。この時、近鉄は周囲に全く相談なしに発表したため、反発を招き、5日後に撤回するはめに陥った。電鉄本社のこれまでのような支援が望めず、球団売却交渉も進まない近鉄の窮地に、救いの手を差し伸べたのが宮内オーナーだった。
もちろん、合併案はオリックス側の事情も反映している。人気選手のイチローを大リーグに出した後、人気、戦力両面でじり貧状態。何らかのてこ入れが必要なのはオリックスとて同じだった。
8年ほど前、政府の行革委の中の規制緩和小委員会の座長を務めた宮内オーナーは、新聞の再販制度撤廃を主張して日本新聞協会の再販対策特別委の委員長だった巨人・渡辺恒雄オーナーと対立していた。プロ野球でもソリは合わず、批判の応酬という場面もあった。
しかし、今年4月、長い不仲に終止符が打たれた。近鉄との合併の意思を最初に渡辺オーナーに伝え、意見を求めたとみられる。球団数削減は、渡辺オーナーが支持する1リーグ制にもつながる。両氏の“雪解け”が、2球団合併の引き金を引いた形だ。
メディア露出の少ないパ・リーグの各球団は、セに比べると経営上も戦力面でも不利。格差は広がるばかりだ。オリックス球団のある幹部は、3月、こう話したという。
「プロ野球は古いしがらみや既得権益が幅をきかせる世界。新たにどの球団も対等にスタートしない限り、改革は進まない。縮小再生産は避けた方がいいが、1リーグ制はやむを得ない」。
両オーナーに1リーグ制の提唱者でもある西武・堤義明オーナーを加え、大物トリオの視線が同じ方向を向いた今、1リーグ制への流れは止まりそうもない。
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