Rukeの日記
ホームページ最新月全表示|携帯へURLを送る(i-modevodafoneEZweb

2004年9月
前の月 次の月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
最新の絵日記ダイジェスト
2005/03/03 ブログー
2005/02/27 サンデーメガネ
2005/02/24 リッタイシ
2005/02/23 アメノイワヤト
2005/02/21 ホムパゲ

直接移動: 20053 2 1 月  200412 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200312 11 10 9 8 月 

2004/09/22(水) ゾク

この国立天文台の調査に関しても、「学校教育できちんと教えていないから…」とか「学校で教わらなくても日常生活や親子の会話で自然と身につく知識ではないのか、それほどまでに親子の会話から科学的な話題が欠落しているのか」といったコメントをたくさん見る。

だけど、とにかく確かな事実は、ほとんどの小学生は地球が太陽の周りを回っているということ、ひいては太陽系の姿を確かに知っているということだ。そしてそのことは実はこの調査結果と何ら矛盾しない。それを理解できないのならば、人の思考というものを全く理解していない。人は論理的な思考など滅多にしないものだ。

ほとんどの小学生は
http://www.awesomelibrary.org/images/solar-system-nasa.jpg
こういった太陽系の姿を確かに頭の中に描くことができるだろう。テレビで適当なチャンネルを一日中付けっぱなしにすれば、太陽系だって銀河系だって(イメージ映像だが)数回目にするはずだ。

件の調査で用意された選択肢は
「地球は太陽の周りを回っている」「太陽が地球の周りを回っている」
だ。そして前者を選んだ生徒は56%、後者を選んだ生徒は42%だったということだ。これは明らかに42%の生徒が間違った知識をもっているという結果ではない。生徒はほとんどランダムに回答し、しかしさすがに前者の方が正解であるから少し偏りができたと見るべきだ。ほとんどの生徒は選択肢を漠然と読み、何となく正しそうな方に丸をつけるだけだ。

これは個人指導のバイトをしていて強く感じることなのだが、ほとんどの生徒は、知識そのものとか、そこから1,2ステップで到達できる結論には面食らう程の、僕などよりもはるかに早い速度で到達する。これは恐らく年齢の差から来る物だ。ところが、それ以上思考を推し進める必要が出てくると急に彼らは停止してしまう。自分の持っている知識を適切に組み合わせて議論を進め結論に到達するという事に、能力以前に精神的な躊躇があるようだ。ようだ、と書いたがこれはごくごく一般的な状況だろう。僕の場合も、大学で理系分野に進み骨のある議論を自分で行う必要が生じることが時々あるけれど、そういった場合に一番苦労するのは、実際にそれを行うこと以前にこの精神的障壁を取り払うことだ。

この調査で月の満ち欠けの原因を問うた設問では、正解として用意された選択肢が「地球から見て月と太陽の位置関係が変わるから」で、最も多かった誤答が「月が地球のかげに入るから」だそうだ。これなど、大学生が見てもどちらの選択肢とも何を言っているのかすぐには分からないというのが正直な所だろう。

また、もう一つ感じられるのは、「勉強とは耐え忍ぶ苦行である」という感覚とも関連することだが、勉強を自分の人生の他のあらゆる部分から切り離す傾向だ。このため経験的に知っていても、まだ習っていないと「知らない、習っていない」となる。

こうして見るとこの調査から読み取れる第一の問題は天文に関する基礎的な知識というよりは、単に積極的な思考、積極的な学びの姿勢の欠如に関することということになる。それは教育に関する議論としてもっと一般的なものだし、多くの人にとっては実はそれほど改善の必要はないというのが本当の所だ。

そしてまたこれらの設問に正解した人も、天文知識の豊かな背景知識を有機的に組み合わせて正解にたどり着いたわけではないだろう。ほとんどの場合彼らは「地球の周りを太陽が回っているの"ではなく"太陽の周りを地球が回っているのである」とか「月が地球の影に入って欠けて見える現象は満ち欠け"ではなく"月食である」とかいう知識からダイレクトに正解を選んだはずだ。

実際の所先に述べた学習姿勢の改善なしには、天文の教育をもっと豊かにしようとしても、「地球の周りを太陽が回っているの"ではなく"太陽の周りを地球が回っているのである」といった形の特定の問題に対するケーススタディに留まるのがせいぜいだ。実際の所そのような学習姿勢の改善はほとんどの生徒にとって必要ないものだし、円周率についての議論もそうだったけれどここでは結局、常識的知識が次第に失われていくことが問題になっているのだからそれで構わないのだけれど、とにかくゆとり教育を批判する通常のニュアンスからはだいぶ異なってくる。


 Copyright ©2003 FC2 Inc. All Rights Reserved.