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2004/02/07(土)
トーケーブツリシューリョーキネンアカデミックモード
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http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/titles1.html 最近こんな所をよく読んでいる。読んでいて特に驚くのは、とっくに達成されていそうなことの多くがまだうまくいっていないということ。
まあ、それは置いておいて、ちょうど(自分の試験勉強と)タイムリーな話があったので考えてみた。 http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/0006.html#15
というかその前に、前から気になっていたことなのだが、量子論を考慮しない統計力学では、状態数という概念を無理に導入する必要はないのではないだろうか。
位相空間A1の条件C1を満たす領域の体積をV1とし、位相空間A2の条件C2を満たす領域の体積をV2とすると。合成位相空間のC1,C2を満たす領域の体積はV1V2になる。従ってS=ln(V)とすれば、加法性を満たす量を定義できる。
ミクロカノニカル分布は単に、条件を満たす体積領域内の実現確率密度が一様ということだ。
もちろん熱力学の第三法則は成り立たなくなるが、その他の議論にはこれで問題がないはずだ。まあそれはおいておくにしろ、この議論で量子論を持ち出すのは論外だということと、「エントロピーの加法性は統計力学ではその定義によって保証されている」ことを確認しておく。
#形式的な机上の計算(思考実験)からみちびかれた結果がパラドックスに見えるときに、それを物理的な考察から解決しようとするのは的外れである。これは有名な、双子のパラドックスに対する「本当は加速度運動だから一般相対性理論でなきゃ扱えない」といった説明にも言えること。このような説明はそのパラドックスを生み出した「勘違い」のなんたるかを明らかにせず、むしろパラドックスの量産に一役買っている。
#だから、エントロピーは示量性を満たすはずなのにこの結果は満たさない->状態数をN!で割ってみたら形式的には解決できた(嬉しい)->量子論でちゃんと正当化された(もっと嬉しい)。というのは余りにも幼稚な喜び方である。
さて、もし熱力学がエントロピーの示量性を要求しているのなら、「古典理想気体は熱力学に従わない」というのが一つの結末である。これはパラドックスでもなんでもなく、物理ではよくあることである。
しかし、少なくとも今手元にある本では「合成系のエントロピーはそれを構成する部分形について加法的である」とのみ要請されている。古典理想気体の示量性を満たさないエントロピーも定義に従って計算した以上加法的であるからこれは満たす。
さて、ではなぜこのエントロピーは示量性を満たさないのか。それには示量性を要求する議論まで遡る必要がある。熱力学でのラフな議論では、熱平衡にある均一な系は、真中で仕切りで隔てようとなかろうと状態に変わりはないことを根拠とする。すると加法性からS(E,V,N)=2*S(E/2,V/2,N/2)。これが加法性量の示量性の根拠である。ところが、気体が粒子の集まりであることを知っている私たちには、この議論が粒子が区別できない場合にのみ成り立つことは明らかである。
こうしてみると、「N!で割らずに計算すると示量性を満たさないエントロピーが出てくるが、別にな〜んにも問題がない」かのように見える(この、粒子を区別することができる場合、示量性量を全て2倍する操作が、混合操作を含んでいて、系を2つ用意することと同一視できないという点までは大抵の場合すぐたどりつけるのではないだろうか。しかし私がこんな文章を長々と書いているのは、この先にちょっと面白い展開があるからである)。
ところがである、先の熱力学の要請の後には、「(したがって、各部分系のエントロピーは示量変数の一次同次関数である)」とある。おかしい、示量性は加法性から帰結されるのだろうか。しかし、件のエントロピーは加法性を持つが示量性を持たない。これは確かにパラドックスだ。そしてまずいことにこの括弧の中は非常にもっともらしく見える!
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