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2004/12/29(水)
カンセーケーゾク
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そして慣性系を導入する基本的な発想は、運動方程式の右辺が「原因に因って生じる」と見なしたい、従って、運動を引き起こす原因となりそうな物を排除していくと右辺は0になるだろうという物だ。ここで運動方程式の右辺が0になるとは dx/dt=v dv/dt=a において、aが0になるという意味である。dx/dtは常にもう一つの状態変数vで与えられる。しかしvの時間変化dv/dt=aについては、状況によって様様に変化する。従って、運動状態が変化しないとは、vが変化しないう意味付けをするのが自然であり、従って、運動を引き起こす原因を断ち切った結果、vは変化しなくなるだろうと期待するのである。
ところがこれは一般にはなりたたない。そこで、それは位置の測定装置(だだっ広い方眼紙)自身の、運動を引き起こす原因からの断ち切りが不十分であったのだろうと考え、位置の測定装置に対して運動を引き起こし得る原因を排除すれば、その状況で物体に対し運動を引き起こし得る原因を排除すると運動方程式の右辺が0になるようになっているのではないかと期待するのである。この期待が実際に成り立ったとき、我々はこの測定方法を慣性系と呼ぶのである。すると慣性系においては、運動方程式の右辺を真に運動の原因と見なすことができるであろう。従って、我々は慣性系における運動方程式の右辺に関する知識を整理し、それを物理法則で呼ぶことを当面の力学の基本方針とするべきであるということになる。また、運動、静止とは元来相対的なものであるが、ここにいたって、慣性系をある絶対的な意味で「静止している」と見なし、非慣性系をある絶対的な意味で「運動している」と見なすことが正当化される。そこで、非慣性系において運動の原因となり得る物を全て排除した後に運動方程式の右辺に現れた加速度は系の運動による物と考え、世界の持つ性質とは切り離して数学的に処理すべきであろう。 #この後、平行四辺形の法則や慣性質量と作用反作用の法則を導入して運動方程式の右辺に関する知識を整理する際に「力」を導入すると便利であるとし、系の運動による加速度の「力」による表現と整合的な表現として「慣性力」を導入する。
さて、以上の議論はたくさんの問題をはらんでいる事に注意しよう。最大の問題は、我々はこれから物理法則を明らかにしようとしているのであるから、この段階では運動の原因をどのようにすれば断ち切れるのか皆目わからないということだ。それだけでなく、このプロセスは完全に仮想的な物であり、そのあらゆるステップは、実際に実行する事が著しく困難である。実際、物理学が後に遠隔力や場の考え方を導入せざるを得ないことを考えれば、それは不可能である。測定装置と対称との相互作用の問題もある。
従って我々は、慣性系の存在を仮定し、その下で世界が確かに記述できるという事のみを以ってそれを正当化せざるを得ない。
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