Rukeの日記
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2004/10/09(土) ダイイチゲンリシュギ
第一原理主義という言葉がある。これは第一原理と呼ばれるある種の物理法則を特に重視したり、それのみを使用することであらゆる理解が得られると考える傾向を揶揄した物で、もちろん宗教における原理主義のもじりだ。

物理法則の多くは、直接的には「現象を観察すると、必ずこれこれこういう事が成り立っている」という事を言っているから、そのままでは問題解決における指針を与えてくれない。つまり、直接的には何か現象を観察して、「ああ、確かにこの法則が成り立っているな」と確かめ感心する事しかできない。実際に何かある現象を説明しようとしたり、何らかの知見(そのうちのあるものは新しい法則になりうるし、あるものは予言と呼ばれる)を得ようとする場合には、論理的に一歩踏み込んで、「この法則が成り立っているはずだから〜」と考える。この論理的飛躍は大したものではなく、誰でも瞬時にできることだし通常誰も意識したりしないが、大きな問題がある。それは、どの法則をどのように組み合わせ、どのように議論を展開すれば目的を達成できるのか、その一般的な方法論が全く明らかではないことだ。

もちろん、物理学者は一種のプロフェッショナルであり、一般人の持ち合わせない独特のセンスでもって縦横無尽にこれらの法則を使って豊かな議論を行い、またさらなる豊かな議論を可能にする有用な法則を見出す事を期待されている。

だけれど問題は、天才と呼ばれるような研究者であろうとも、四六時中ひらめいているわけには行かないということだ。それでも物理学が自然の神秘を暴こうとするロマン溢れる道楽行為であるならまだ良い。しかし物理学を実際に何かに用いようとすればこれは問題となる。何かのために物理学を用いようとした時に、一々天才が必要で、しかもその天才が天啓を得るまでただじっと待っているしかないのだとしたら、その物理学は余りにも使い勝手が悪すぎる。

物理学の最終的な目的はあらゆる自然現象を理解するできる限り一般的な視点を得ようとするものだ。自然現象にはあらゆる階層で多くの法則を見出すことができる。現在ではミクロの方向に掘り下げるだけでなく、階層を登って行く事さえできる事が分かってきていて、誰もがどちらの方向にも終りはないのだろう、という予感を抱いている。ニュートン力学の建設には多くのひらめきが必要だった。原子、電子レベルでの現象を理解する量子力学の建設にはやはり多くのひらめきが必要だった。これくらいまでならまだ許せるしそこに現れる天才達を無邪気に称賛していれば済みそうだ。だが、場の量子論、素粒子の理論、と来てさらにミクロのレベルに関して超弦理論をはじめとする斬新なアイデアがたくさん提出されている。こうなると我々はいい加減天才とひらめきに食傷気味になる。あらゆる階層の物理法則を統一的に理解する視点こそが欲しくなる。実際今の物理学は、ここには程遠いものの、物理法則を見出す事に留まらず物理法則がいかに世界に芽生えるかという、物理法則の由来すらも議論の対象としている。

しかしそのような一般的な視点というものは結局の所ほんのわずかも得られていないのが現状だ。そんな物が簡単に得られれば誰も苦労しない。結局の所物理学は天才を必要とする。そして僕らのほとんどは悲しいことに天才ではないから、物理学を学ぶ事はできても、実際に何かをしようとして途方にくれることになる。そして、そんな状況でついつい誘惑されてしまうのがこの第一原理主義なのだが、実の所僕はこの視点をかなり大きく評価している。

第一原理と呼ばれる法則は、文言上は先に書いたような他の法則と大して変わらない。しかしその直接的に意味する所は大きく違う。これは世界を時間変化させるメカニズムの雛型であり、世界の作り方そのものが記述されている。従ってこれを用いた問題解決の手順は単純だ。「世界を実際に作って、動かしてみろ」。そう、これが第一原理主義だ。


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