Rukeの日記
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2004/10/19(火) パラドクスツー
電磁気の講義の冒頭で先生が「トランスの一方にAC電源を繋ぎ、もう一方は何の負荷も介さずに導線で回路を閉じてしまう。するとこの回路はコイルの部分に有限の電圧Vが生じる。この回路の抵抗を0に持っていく極限を考えると、オームの法則V=IRより電流Iは無限大に発散する。しかし電流が発散する事はないから矛盾。これはどう説明するか」という話をした。これなども、第一原理主義者にしてみれば、説明する前から説明可能であるという確信を持つ事ができる。というのも、電磁場と荷電粒子の運動はマクスウェル方程式とニュートンの運動方程式で完全に第一原理的に記述されるからだ。

実際に第一原理的に時間発展させることを考えると、コイルを貫く磁束は強制的に振動させられるのだから、有限の電圧Vが生じるという部分に問題はない。そして抵抗が0なのだから荷電粒子はいくらでも加速する。よって電流は無限大に発散する。うん、何の問題もない。

というのは間違った考察なのだが、とにかくこの考察は完全に一本道で迷う所がない事に着目して欲しい。

さて、しかし実際には電流が発散してはまずい。そのまずい理由は普通エネルギーの保存から説明される。ところで、そもそも磁場がない時電場は保存場だったが、磁場が変化するとrot Eが生じてしまい保存場でなくなった。この場合エネルギーの保存は電場と磁場を合わせて考えなければいけなかった。つまりマクスウェル方程式の四式全てをきちんと用いれば必ずエネルギーは保存すると第一原理主義者は確信するわけだ。従って、強制的に加えられている磁場以外の磁場もきちんと考慮すればちゃんとエネルギーは保存するはずだ。そう、問題は回路のインピーダンスを忘れていたことにあったと分かる。このように、第一原理主義ではパラドックスと呼ばれる物は生じたと同時に解決される。

ところでここまでの議論は第一原理主義でパラドクスががいかに解決されるかを端的に表すためにラフに行ったが、この回路では常に一定の電力供給があるから電流が単調増加する事は(もちろんここまでで議論したように自己インピーダンスにより抑えられるのだが)エネルギーの観点からは問題があるわけではない。実は、オームの法則V=IRは、電流Iが流れると電圧降下Vが生じる原因-結果関係を表しているように見えるのだが、マックスウェル方程式を良く睨んでみればそんな馬鹿な事があるわけがないことが分かる。

実はこの種の関係式は定常電流が満たす関係式なのである。この種の関係式は回路の時間発展を表す第一原理的な式として扱われるが、実は「定常状態が満たす条件式」で、時間非依存のシュレディンガー方程式やポアソン方程式に近いものだ。従って定常状態でなければオームの法則は当然満たされない。普通回路の時間発展を計算するときは定常電流が実現する時間スケールに対して回路の変化が十分ゆっくりだと仮定して計算している。

このように、第一原理主義的な視点から法則の上下関係を意識することは、一般の問題解決には役立たないにしろ、パラドックスの生じる余地を与えないという重要な意味をもつ。


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