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2003/10/18(土)
ラングエッジ
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外国語を習って、日本語にない発音が出てくると、大抵唇の開き方とか舌の形とかを解説されるが、あれって意味がないとつくづく思う。
発声にはアナログな部分とデジタルな部分がある。後者は例えば"た"と"な"、"ま"と"ぱ"の違いを作り出す。このような部分は機能-動作の対応をつけることができる。人は意外に、音を聞いただけでそれを分解して必要な機能を選び出すことが出来るようで、この部分は初学者でも容易に再現できるようだ。こちらでは唇、舌、喉が全て使われる。
一方アナログな部分は発声においてベースとなる音を作り出す。この部分を再現するためにはひたすらに音を聞いて、それを再現しようと努力しながら発声を繰り返すしかない。ここで重要となるのは喉の形である。咥内ももちろん振動管となるが、音はまず喉で作られる。口を動かさずに会話をするのは珍しくもない特技だ。
従って、音をまず作る段階というのは解説できる物ではなく、とにかく真似ることを反復するしかない。
しかし、実際には、舌をこうしろ、だの唇をこうしろ、だの、”あ”の形にして”い”の音を出せだの、”い”と”お”の中間の形にして音を出せだの、こんなことばかり言われる。デジタルな部分についてはこのような解説は有意義だが、大抵の場合学習者は自分でどうにかしている。そしてこのような指示の少なくとも半分はデジタルな部分には関わっていなくて、アナログな部分の結果として、一番楽な形が選ばれているだけだったりする。このようなまず音ありきである唇や舌の形については、いくら指示通りにしても何の意味もない。”あ”の形にして”い”の音を出せといわれても、”あ”の音か”い”の音しか出ない、そんな経験を多くの人がしているはずだ。
私が第二外国語として履修している朝鮮韓国語のクラスでも、似たような事が行われているが、特にどうしようもなかったのが、濃音と呼ばれる音である。曰く、「空気を出さずに音を出せ」だそうである。どうしろと言うのだ。実際の所、これは日本語の”っ”に近い物で、前後の音の発生を微妙に変える働きをする、と捉えるくらいがちょうどいい音なのであるが、始めは本当に苦労した。ただ、小さい”つ”以外に小さい”ぷ”、小さい”く”、小さい”す”、小さい”ちゅ”があるので、聞き取りにはまだ苦労する。そしてこの聞き取りができるようにならなければ、けっしてまともに発音することは出来ないのである。何しろ私にとって、いまだその音は存在しないのだから。
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