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2004/10/10(日)
『SMiLE』について考える
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ブライアン・ウィルスン名義『SMiLE』2004年版については、すでに萩原健太さんを始め多くの方がHPで書かれているし、今月のレココレでも特集が組まれるから、熱心な研究家の方々による詳細な分析記事が載るんじゃないかと思うんだけど、私が考えたことをまとめておくことにします。 といっても、私の場合、片っ端からブートや資料を買い漁るようなマニアじゃないから、数少ない公式発表音源との聴き比べから考察したものだし、ちゃんとした文章じゃなく、ごく個人的なメモみたいなものですから、厳しく突っ込まないでね。(^^;
2004年版は、37年前にあった様々な制約から解き放たれたことによって可能になった作品であり、当時ブライアンが『SMiLE』を完成させていたとしたら、こうした構成にはならなかったはず。
66年〜67年当時は当然ながらLPレコードの時代であり、A/B面があった。またその頃のLPの収録時間は各面15〜20分、トータル30〜40分である。 2004年版は約47分で3部構成。67年だったら、もっと削らなくちゃならなかったはずだし、A/B各面にテーマを持たせた2部構成だったと思う。
当初ブライアンには“Good Vibrations”を収録する意思はなく、オープニングには“Our Prayer”を考えていた。 実際に曲を並べてみても、“Our Prayer”から始まり、“Surf's Up”で終えるというのがアルバム構成からは最も理想的な形だろう。 で、その段階ではA面=アメリカーナ・サイド、B面=エレメンツ・サイドという構成は考えていなかったのではないか。
ところがキャピトルはヒット・シングル“Heroes And Villains”、“Good Vibrations”をそれぞれアルバム各面の冒頭に収録することを要求。 この制約が出たことで、各面にテーマを与える必要性が生じたんだと思う。
おそらくA面は“Heroes And Villains”から始まり“Surf's Up”で終える「アメリカの風物、昔の西部へのタイム・トリップ」、そしてB面は“Good Vibrations”から始まる<The Elements>組曲となっただろう。 しかし結局は収拾がつかなくなり、まとめ切れず、数多くの素材の断片が残された。(一番の難題は“Good Vibrations”をB1にするとアルバムを締め括る曲がないことだったと思う)
ともあれ、2004年版が完成したわけだが、面白いのは新たに作られた曲(メロディ)がまるでないこと。一部ヴァン・ダイク・パークスが新しい歌詞を書いたようだが(もともとあったのかも知れない)、改変されたのはそれだけ。 つまり『SMiLE』が挫折したのは、「素材をどう並べるか」で行き詰まったからということになる。
ところが、この2004年版、CDによってA/B面や収録時間の制約がなくなり、レコード会社からの制約や圧力もなくなったことで、もっと好き勝手に作れたはずなのに、意外に元の枠組みを踏襲しているところが多いんだよね。 結果的にはファンの“幻想”に沿った作品になっていると思う。
アレンジに関しても、“Heroes And Villains”は“In The Cantina”ヴァージョン、“Vegetables”、“Wind Chimes”、“Wonderful”などは、どれも『Smiley Smile』版ではなく、オリジナルの『SMiLE』セッション版のアレンジをほぼ完全にコピー。 (ちなみに、オリジナルの『SMiLE』セッション音源は、公式には『Good Vibrations』Box Disc2で聴けますが、このディスクの18曲目〜28曲目こそが、もともとブライアンが考えていた『SMiLE』の曲順に最も近いものではないか、と私には思えます)
こうなると逆に『Smiley Smile』でのリメイクは何故になされたのかという謎の方が大きくなっちゃったとも言えますね。 『SMiLE』が完成に至らなかったため、そのマテリアルを生かして、急遽、即席のニュー・アルバムを仕上げた。 その経緯は分かるんですが、どうしてオリジナルよりもずっと劣る、クソ・アレンジで再録音したのか、さっぱり理解出来ないんですよね。 レココレの特集で誰かが謎解きしてくれるかなぁ。
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