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2002/10/09(水) 思いがけないコト
アメリカのホワイトサンズ国定公園を知ってる人いるかな?
走行距離にしても往復420kmにもなるという壮大な広さの砂漠らしい。
その名の通り、白い砂と青い空のみで、その中に1歩踏み入れると「音がない」という。
会社内の29歳の青年は、写真が趣味らしくその砂漠に入り写真を撮りに行った。
セクションが違うので同じフロアーにいるとはいえ、面識もないしどんな人かも知らない。
たまに見かけるその外見からは、「伏し目がちな目をしたおとなしい感じ」としかわからない。
そんな素敵な趣味がある人とは想像できなかった。

社内メールのある記事に添付されていたその砂漠の写真を見て、私はその世界に吸い込まれそうになった。
何もない、青い空と、ただ永遠と白い砂が続く景色であった。
彼はその世界に吸い込まれ、帰らぬ人となった。
行方不明と新聞に載り、大規模な捜索が続けられたそうだが・・・。
彼はあの異空間に単独でレンタカーを借り、道に迷ってしまったのだ。
単なる普通の砂漠を想像していた私は、「いろんな趣味の人がいるものね」なんて
彼の行動をそれほど理解できないでいた。でもその砂漠の写真を見て、納得した。
想像するに、自分の息使いしか聞こえない程の「無音」の世界なのだと思う。
そんな神秘的な情景だった。

話したこともない人なのだけれど、なんだかとても悲しく切なくなった。
何事もなくいつも通りに「またね」と別れた人と、2度と会えなくなるなんて誰も想像できない。
道に迷う前に彼は、目的だった写真を撮れたのだろうか・・・。
写真を撮れずに終わってしまったのではあまりにも悲しいと思う。
でも、彼は今もあの砂漠にいる。
家族の意志で、大好きだったこの砂漠に遺灰を蒔かれたのだ。
1度、彼からそんな世界の話を聞いてみたかった・・・。


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