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2004/12/21(火)
「コミュニケーションの営み」を考える〜その1
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「学力低下の原因は、ゆとり教育ではありません。睡眠不足です」とはっきり明言した広島県尾道市の小学校陰山英男校長。私もまさに同感です。文部科学省は日本の子供たちの学力低下データーにショックを受け施策転換にゆれているようですが、それは始めからわかっていたことです。私はむしろ「よくこの程度の順位でとまったな」という気がします。校長という立場で何を言っているのかとお叱りを受けそうですが、視点を変えて取り上げてみます。 日本人の余暇の過ごし方が多様化し「物」が氾濫する環境の中で、子どもの環境も大きく変貌しました。少子化や家庭でのひきこもり、働けない青年の増加も深刻な状況です。幼い時からのテレビゲームやビデオ、テレビ番組へのくぎ付けは深刻ですし、近所の友達や地域での遊びもほとんどなくなりました。さらに「活字離れ」も大変な勢いで進行しています。それは何も子どもにかぎったことではありません、大人も同じです。コンピュータに代表される情報化社会がいくら発達しようとも、人間生活の根幹は人と人とのコミュニケーションです。携帯やメール、掲示板、チャット・・・などの顔の見えない会話ではなく、互いの顔と顔をつきあわせる会話が必要です。祖父母、親、友達、近所のおじさんおばさん達との会話が大切であると思います。そして、「芸術・文化」との会話です、本、新聞、絵画、音楽などの芸術や本物との出会いが大切です。これらのコミュニケーションや本物との出会いは生活の中に組み入れ、きちっと自分でコントロールすることが可能です。きちんと生活の一部として構成されます。しかし、TVやゲームなどはなかなかコントロールができず、ついつい時間を忘れ深夜にまで及んだり睡眠時間を短くするなど、時には周りとのコミュニケーションをも遮断してしまいます。中には、何時間もTVを見たりゲームに長時間没頭することはない、という子どももたくさんいるはずです。その時間を勉強や読書に充てたり、きちっとコントロールできる環境作りは親の考え方しだいです。 「百ます計算」で一躍脚光をあびた陰山氏もはっきりと指摘しています。「百ます計算」で創るのは「生きる力そのものである」と。この20年間で低下したのは学力だけではありません。体力や気力も低下しました。生きる力そのものが落ちたのです。「たくましく生きる力」を育むには、いろいろな方法があるはず。本校の、合唱活動を通して生徒が生き生きと頑張っている姿も然りです。全国の地域の状況や子供の発達段階はけっして同じではありません。今、目の前の子どもに教師がプロとして、子どもの生きる力をどのようにして今よりさらにたくましく育むことができるかをしっかり検証し実践しなければなりません。親も同じです。「親のプロ」として、子どもが家庭で過ごす一日の3分の2の時間をどのように過ごさせ指導するかにかかっています。 昔から日本でも学習の基礎は「読み書きそろばん」と言われてきました。ところが今、子どもたちにそのことが「しんどく」なってきたのです。また、学校も親も反復練習をさせなくなってきました。教科書が薄くなってさらに時間が削減されてきたことだけが学力低下の原因ではなく、原因はどうやら違うところにある気がします。教科書が薄くなって時間が減った分だけ学校でも工夫しなければなりません。子どもが夢中になって反復練習をしたり計算練習したり、「しんどい」ことを何回も挑戦できるように、「楽しくできる工夫」をしなければならないのです。昔と違い、一見して楽しそうなことはこの世の中にあふれている時代ですからなおのことです。魅力的で楽しくなければ本も読まないし、勉強にしても、宿題を出されたり評価されたり入試があったりするから仕方なくしている」という子どもの気持ちはずーっと変わらないと思います。まさに「自ら学び自ら考える力」そのものが衰退し始めているのです。「しんどい」と思わせずに、夢中になって頑張る力を発揮させるプログラムを工夫する必要があるのではないでしょうか。こんな驚くべきデーターもあります。睡眠時間と各教科の平均点の関係を調査したデーターです。睡眠時間が長いほど、比例して点数がアップしているというのです。はたしてあっているかどうかはわかりませんが、確かに早寝早起きは子どもの学力改善と密接にかかわっているようです。また、朝食をきちっとバランスよく、できるだけ多くの種類の食品を摂ることによっても、頭の働きが大きく違ってきます。「今、親として出来ることは何か」と問われるならば、「少なくても、きちっと朝食をとらせ、早寝早起きをさせ、テレビも平日は1時間以内(休みの日などでも2時間以内)にするだけで、元気で積極的な、表情豊かな子どもに成長する」と答えたいと思います。そして、それは必ず「生きて働く学力」向上の基盤となるはずです。
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