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2004/09/26(日)
むかし、むかし…
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昔、昔あるところにオトメがおりました。 ちなみに日本昔話に出て来る「おトメ」ではなく「乙女」の方のオトメです。なんやーもー面倒臭いので「乙女」と書きましょう。
たくさんの文献から見て、乙女というのは美しい物が好きな反面、醜い物には失神で対抗する生き物のようでございます。
この話の乙女も例に漏れず、美しい物に微笑みを、気味の悪い物には失神を与える毎日を送っておりました。
ある日の事。 乙女達は一面のお花畑の中で花の冠を作っておりました。優しい日差しに甘い花の匂い。
乙女は、とても良い気分でした。
…と、そばを足早に通る者がおりました。
魔女でございました。魔女は猫背の体にボロボロの服をまとい、杖をついておりました。魔女ですから顔だってそれはそれはヒドイ顔をしておりました。
たちまち花畑のあちこちで乙女が失神を始めました。中には自分の美しい顔を撫でながら失神に耐える乙女もおりました。
魔女は、そんな乙女達を見て気の毒そうに、こう言いました。 「憐れな。」
これを聞いた乙女は大変驚きました。なぜなら今まで誰からも憐れに見られたことが無かったものですから。 「なぜ私達が憐れなの?」
魔女は何も言わずに行ってしまいました。一人の乙女が後を追いました。どうして自分が魔女に憐れに思われるのか知りたかったからでございました。
追いかけて追いかけて…着いたのは魔女の家でした。想像していたのとは違い、こざっぱりとした木の家でございました。
魔女は一粒の実を乙女に与え「もうお帰り。」とだけ言いました。乙女はヒドイ顔をした魔女に礼を言いました。
乙女は魔女の家の外に出ました。もらった木の実を食べる事にしました。
いつの間にか日は落ち、夜になっていました。乙女は今まで夜道を歩いた事がありませんでした。
暗い帰り道、乙女は自分の足元に気味の悪い物がくっついている事に気付きました。それは昼間の陽気な感じとは違う、陰湿でべっとりとした張り付くような影でございました。
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