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2013/04/09(火) 三文小説になっちゃうけれど
 3日に家を出て8日に帰ってみるとずい分雪が少なくなっていた。遊んでいた分を取り戻すことなどしないけれどやるべきことはやっておこう。一日ひと仕事でいいだろう。
 今日はトイレを復活、ついでに残った雪囲いを片付ける。
 ところで旅の初日、真の闇と大雨のなか十日町へ下ったのだがあんまりいい気持ちではなかった。
 十日町を5:56の列車に乗り込んで春の旅が始まる。列車を5回乗り継いで福井に立つと桜は見えず雨は降り続いていた。ホームに敦賀行きの区間列車が入っていて、そこで姫路行きに乗り換える。
 フォーク歌手のイルカによく似た娘が4人掛けの前席に座ったときこの辺りの大学生の帰郷と思った。ジーンズ地の長めのフレアスカート白の大きめのセーターと青のチョッキ。明るいハート模様の布のバックと赤いナイロンの手さげ。しばらくしてうすみどりの面白いマスクをつけたとき地方の娘ではないなと感じた。
この雨が上がればこの辺りの桜は咲き出すだろうと見えた。
 敦賀で遅れて入って来た列車に乗るのだが先を争う人に押されてまた4人掛けの席でその娘と相席になった。検札に来る車掌に手渡す券は同じ回数券でその娘は都会からの旅行者だった。僕は64歳のおじいさんになっているのだが、むかしの若い頃のこんな状況の旅を思い出したのは間違いなくイルカのようなひとり旅の娘によってだった。手にした新田次郎の頁を開いたままあの頃のような旅の感覚に浸っていた。
 手さげから毛の靴下を出して履く娘の姿が目に入った。その時なんだか時間が止まったように感じた。
 「どこに行くのですか」「魚島」「それってどこにあるの」「瀬戸内、尾道から船でね」「あッ それいい、私も行きたい」「連れてってくださるかしら、それとも仕事ですか」「いや、いいけどもあなたの予定は…」「そんなものいいの」「さくら・しま・ふね」「こまったな」「困らないわ、これって超るるぶよ」なんだか照れて汗をかいてポケットからウィスキーを出してひと口飲むとよだれのようにウイスキーがたれて新田次郎がボトンと落ちた。そうこうしているうちに娘はスックりと立ち上がって何も言わず京都で下りていった。新田次郎が寂しそうに僕を迎えた。


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