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2011/06/16(木)
季節も人生も過ぎ去るのは瞬間である
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山はあっという間に春から夏へと変ってゆく。春の桂の芽吹き、山桜、ブナの早緑は厚い緑に覆われてゆく。吹き抜ける風にそよぐ木の葉の季節になった。 今日はもっきりやの用事で講習に出かけるのだが、道に立つ政太郎さんを見つけた。「昔、この山に植えたワサビがどうなっているか見たくて」と87歳になる政太郎さんは山を見上げていた。講習の帰りに斜面に腰をつけて山を見つめている政太郎さんを見た。まるで杜甫や老哲学者が昔を懐かしむように座った姿に僕は感動を覚えた。 戦争に持っていかれ、帰ってここの開拓に力を注いだ政太郎さんの人生を考えざるを得なかった。機械のない、道すらほそぼそと付くだけだった時代を生き抜いてきた世代の汗と涙と喜びと矜持に感動した。僕らの時代では考えられない世界が50年前まで続いていたのだ。どうしたら彼等の人生をつなげて行けるのかと涙を流した。
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