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2010/12/18(土) まぼろしの猫
 夜にふとんに入って本でも読んでいると家の中にはいろんな物音がしていることに気がつく。サササと天井を走る音やドタドタと天井裏で暴れまわる音、ストーブの薪がはぜる音に、池に水が落ちる音。山は静でそれらの音は始めての人にはあんまり気持のいいものではないはずだ。
 ここに来たころ天井からズズズッ、ズズズッと何かが這いずり回るような音に驚かされたことがあった。その時はここに来たばかりでネコのタミコがいたから無理にでもタミコの出す音だろうとこじつけてみたのだけれどタミコはそばにいて、どきっとし怖いとふるえたことがあった。翌日2階の廊下に大きな青大将を見つけて原因が分かってホッとしたものだ。無住になっていた家に住み着いてたヘビがねぐらを変えようとしていたのだろう。また大雨が外壁を叩いたときにはバタンと大きな音で飛び上がったこともあった。雨が止んで外に出ると土壁に塗られた漆喰が雨に打たれて落ちた音だと納得した。
 音というのは怖いものでその原因が分からない内はどうしても震えてしまうものだ。ただそれも長く暮らしているとすべて原因と結果があるもので自身の怖いと思う気持がやみくもに恐怖につながるようだ。「幽霊見たり、枯れ尾花」である。むしろひとりでこんな辺鄙なところに馴染めないでいる自分がここを出たいという気持につながって、後ろ向きな気持を正当化しようとするのだ。カメムシが大量に入り込んだり、羽虫が大発生したり、クマの足跡を見たり「とても住めない。早く逃げろ」と自分を突き動かす。昔読んだリルケの「マルテの手記」の現実版のように感じている。
 昨日はそのままウトウトと眠りに入ろうとしたとき、階段を上がってくる足音のようなはじめて聞く音でウッと目が覚めた。怖いのではない。何とも懐かしいやさしいddとあまえるような軽い響きが実にタミコの足音に良く似ていた。僕はそのまま寝返りをひとつ打ってまぼろしのタミコをふとんに入れてやった。


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