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2009/11/10(火)
捨て丸 一芸
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指の先が割れるのだ。重い石やスコップを使い続けているとどうしても変なところに力が入る。それが痛い。人に聞いてみると修行が足りないと云われた。云われると思った。確かに修行は足りないのだから。今日のように暖かい日ならいいのだが寒い日には指先の痛さが倍になる。それが辛い。明日の天気が気になるところだ。 切明に来る客もすっかり寂しくなって、数えるばかりだ。今年の5月にこの辺りに捨てられた犬がどうにか雄川閣に拾われて「捨て丸」としてはじめての冬を迎える。もちろん彼だってなかなか大変で寒い雪の時期にはたしてどこで朝を迎えるのかと思うと心配でしょうがない。タヌキやムジナ、キツネやテンのような野生動物が温泉のパイプの上で寒さをしのいだりしているのだ。玄関とかにでも寝床を作ってもらえないものかといらぬ気遣いをしてしまう。今日も捨て丸は短い尻尾を振りながら「忘れるな、忘れるな」とひとつの芸を私に見せた。俗に「チンチン」をビクとも動かないでして見せたり、右前足を上げて頭を低くしてブリューゲルの猟犬のポーズを取って見せたりする。私は私で慣れない仕事や冬支度に齷齪(アクセク)しているけれども、捨て丸は捨てられた犬として二度と捨てられないように齷齪しているのだ。 今日の名言 わしもめでたく九十五になった。昔日の齷齪、嘆くに足らず、じゃよ。 「蒼穹の昴」浅田次郎
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