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2005/04/16(土)
熊という奴はソ 寒いものだ
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前夜、2時半まで飲んでいてはいけませんが、とにかく念願の熊猟に同行を許されて、朝6時起きとなりました。お弁当を作ります。前日、鳥釜飯を作って置いたのです。ギュウギュウにご飯を詰めて、お茶やパンなんかを持って、早々に6時半の待ち合わせに向かいます。YTさんの所へ行くと、お上さんが「とうちゃん、もう行ったで」「うわあー」とホンダの軽トラを追いかけます。前夜の祟りかスピードを出すと、体が後ろに残ってしまいそうで困りました。栃川で追いつき、そのまま、五宝木まで一目散。親方の家に集まってくる猟師の表情には、これから行われる猟の期待と緊張が、肩に担いだ銃の重さと共に伝わってきます。私と写真のY氏は、猟というよりか銃を担った面々に頭を下げて「よろしく、よろしく」とお願いすることに腐心するのです。 やがて、出発の時が訪れ、七人の野武士はそれぞれの軽トラに乗り込んで、山へと向かいます。車を置いて山に入っていく猟師は長い一本の隊列を組んで、大きな歩幅で一歩一歩確かめるように斜面を上ります。時より吹く風が、皆の期待を包み込んで山へ向かいます。雲が切れて、陽光が肩に担がれた銃を照らします。猟師は黙りこくって順々と熊の巻き場へと着きます。我らはその少し前で、邪魔にならないように歩みを止めて、杉の葉をしいてYTさんと共に腰を下ろします。七人の野武士は車座になって軍議の後、二手に分かれて歩き出します。 用事のあるYTさんはこれで帰ってゆき、残された私たちは、興奮を秘めながら時計を眺めます。1時間、2時間、刻々と過ぎてゆくなか、ただ、待ちを決め込んだ私たちはお弁当を使います。杉の葉をもっと集めて、横になれるベッドを作って、やがて熊引き歌と共に下ろされてくる大きな獲物を待つのです。 気がつくと前夜の崇りで睡魔に襲われて、いびきを掻いて眠っている私の耳に「ほー、ほー」と熊の巻き狩りが始まった声が届きます。時計は10時をさしています。いよいよ始まったのです。 矢場(熊の逃げてくる所で銃を構える所)に人が立ったのです。時よりピーピーと笛の音がするきりで、熊も猟師の姿も探せませんでした。そして、時間だけが過ぎていきます。それから、4時間寝たり起きたりしながら待ちわびる私たちの上に、降り注いでいた日の光が、厚い雲に隠れると、途端に雪の冷たさ、風の怖さがおそってきます。体の芯まで凍ることはなかったのですが、結構な寒さでありました。 猟師の人たちがいつもこの寒さのなかで、ひとり獰猛な熊と対峙することは、生やさしいことではありません。何時間も好きなタバコも吸わないで、トイレも我慢しながら、汗で濡れた体を、冷たい風にさらしてする猟は、こんな形で参加した私にも十分感じられるものでした。これからも、チャンスがあれば、万難を排して参加させてもらい、是非、猟師の喜ぶ姿を見てみたいものです。 今回の猟は、熊が獲れませんでしたが、私たちの初めての熊猟は「熊って奴はソ 寒いものだて」
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