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2006/03/08(水) 多摩
ひとり、またひとりと、多摩を去っていく。
気がついたら、周りにはほとんど誰もいなくなってしまった。
多摩にはいつも友達がいると思ったのに、
学校に行けばいつも誰かがいると思ったのに。
多摩はもう俺らのフィールドじゃないのかな。

自分も、22日に多摩を出る。
いざ引っ越しの日が決まると、急に多摩が愛おしくなる。

4年前、俺は多摩が大嫌いだった。
所詮は山を無理矢理切り開いたニュータウンだらけの、
人工的で無機質な街なんだ、と思っていた。
何が多摩センターだよ。多摩中央でいいじゃんか。
何がモノレールだよ。電車でもないし中途半端な存在だ。
俺の大学生活はこんなニュータウンに埋没するのか・・。
多摩に引っ越すのが憂鬱で仕方がなかった。

結局4年間多摩に住んで、多摩で知らないところはなくなった。
穴場の店も見つけた。美味しい店も見つけた。
お気に入りの景色も見つけた。抜け道も見つけた。
そして、そのひとつひとつに、たくさんの思い出が詰まっていった。

気がついたら、多摩を大好きになっていた。
都心に出て疲れても、多摩川を渡って多摩に帰ってくるとほっとした。
落ち着ける場所と雰囲気が、そこにはあった。
まるで、多摩全体が「家」のようだった。



名残りを惜しむように、何かと理由をつけてはバイクで多摩を走り回る日々。
用事は済んだはずなのに、家とは逆方向に走り出す。
そして、わざと寄り道をして、いつか走った道を再び走る。
多摩を出る前に、多摩の全てを目に焼きつけておきたい。
そういう思いが心のどこかにあるからだろう。
あと何回この道を走ってここに来ることができるのかな。
そう思うと、急に切なくなる。
そうしているうちにすぐに日は暮れる。

多摩の夜も、あとわずか。


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