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2005/01/28(金) 電車男
最後のテストを終えて、実家に帰る途中の出来事。
夕方の相模線の車内。自動でドアが開かない田舎電車。
始発駅から終点まで乗るので、俺はMDを聴きながら寝る気満々。

乗ってしばらくすると、眼鏡をかけた小太りの男が乗ってきた。
目の下にはくまができ、やつれた表情であった。
男は俺の向いに座った。しかしその挙動は落ち着かなかった。
男は何かを見ようとしているようだった。
その視線の先に目をやると、ミニスカートの女性が寝ていた。
男はそのミニスカート中を必死に見ようとしているのだった。
しかしその時は「気持ち悪い奴が乗ってきたな」としか思わなかった。
それからしばらく、俺は寝てしまった。

気が付けば寒川駅の手前あたり。もうすぐ終点の茅ヶ崎である。
俺の周りの客は寝ていたが、あの男だけは起きていた。
すると、男はブルゾンの胸元から何かを取り出した。
首からぶら下げていた携帯電話だった。
そして、そそくさと携帯をミニスカート女性に向けたと思った瞬間。
「カシャッ」
という小さなシャッター音がした。
盗撮だった。
男は、何度かその行為を繰り返した。
そして、再びそそくさとブルゾンの中に携帯をしまった。
俺以外の客は気付いていない。
俺しかこの事実に気が付いていない。
女性に知らせるべきか。
男を捕まえるべきか。
それとも見過ごすべきか。
葛藤に駆られた。
動かなきゃいけないのはわかっている。
でも体が動かない。
無駄に心臓の鼓動だけが高まる。
そうこうしているうちに、終点の茅ヶ崎に着いてしまった。
何も知らない女性は、すぐに下車してしまった。
その様子を男は、なめるように見ていた。
女性が改札を出たのを確認した男は、雑踏の中に姿をくらました。

男がどうのこうの、ということより、何も出来なかった自分が情けなくて嫌だった。
俺は電車男にはなれなせんでした。
その後に乗った東海道線も、気分がよくなかった。


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