マガッタ玉日記
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2008/08/12(火) 『#55 ASIA 〜 パキスタン』
『豚の食えない国、男は晒し女は隠す』 8/9 チトラール



パキスタン北西部「チトラール」。
この辺りの州の名前を調べると「北西辺境州」だった。
辺境、だなんて自国に呼ばれりゃ世話がない。
僕がここの人間なら「お前の尺度で勝手に決めるな」と言ってやりたい。
ジープの窓から広がる光景を見ながら僕は考える。
辺境州、か。
どんな辺境地が広がっているんだろう。
楽しみでしょうがない。
僕は今日、チトラールにやってきた。

***********

店店店店店店店店店店店          

店店店店店店店店店店店

軒を連ねる屋台のような店と腐敗臭、昼寝する野良犬とゴミをあさる野良牛。
ほとんどの野良犬たちの皮膚はただれ、体のどこかが腐ってきている。
僕は注意しながら横を通り抜ける。
こいつらは狂犬病にかかっている。
夜になればヨダレを垂らし、辺りを徘徊し始める。
いやそこらにいる牛もヤギも猫も安心できたものじゃない。
そういえば不思議とアジアではあまり猫の姿を見かけない。

マスツージを早朝に出て4時間もすると、僕は辺境とはとても呼べない大きな町に着いていた。
「…でっけーじゃんすか!」
チトラールは普通の町だった。
宿に荷を置くと、すぐに警察署に向かう。
この町に長居するつもりはない。
明日にはこの町を基点に「カラーシャ谷」に入る。
なんなく谷への通行許可書をもらうと、この町を散策し始めた。

少しずつパキスタンを南に下っていくと変わってくるのは、アジア色が強くなってきたのと女性の姿が見れなくなったこと。
イスラム色が濃くなってきている。
外にいるのは男たちばかりだ。
時々女性の姿を見かけても黒子のように影になっている。

イスラムの女性は家族以外にその姿を見せてはいけない。
だから外を歩くときは全身を黒い布で覆う。
目元だけを残し、黒いベールでその姿を隠す。
戒律をより重んじる人は目元さえも布で覆い、正直その姿は滑稽だ。
なんというか、日本で育った僕には気の毒にしか思えない。
そのくせ、男たちは働いているんだか働いていないんだかよく分からないやつらが多い。
昼間から道でチャイをすすり、だべり、とても一家の大黒柱とは呼べない姿をさらしている。
「お前ら、少しは働けよ!」
そう叱ってやりたいもんだが、「お前もな」と言われたらそれまでなのでやめておこう。
町の男たちのダラダラした姿を見つめながら、僕は鉄串にこびりついた牛肉をチャパティ(平たいパン)ではさみ抜き取り腹を満たしていく。
イスラム国家では豚が、ヒンドゥー国家では牛が食えない。
理由はそれぞれ豚は不浄の生き物だから、牛はシヴァ神の乗り物だから、だそうだ。
どちらも食える日本は素晴らしい。
ところで日本は金メダルをとったのかね。
串屋でオリンピックをながめながら10本、20本、30本、腹が根をあげるまで食い続けると、あとはチャイをすすって泥のように眠った。
「お前もな」

確かにそのとおりだから、何も言えない。


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