マガッタ玉日記
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2008/07/08(火) 『#23 ASIA 〜越境』
『明るい賄賂』            7/9越境



「YALLAMA」行きミニバスに揺られている。
「本当にこんなところに国境があんのか…」
そんな荒地が続いている。
「今日こそはウズベキスタンへ!」
そう気を引き締めていても同じ景色ばかりが続けば、つい眠りに落ちてしまう。
「ヤポーニ、ヤポーニ!」
乗客に叩き起こされると、そこはまだ荒地だった。
が、運転手は「ここで降りろ」と言っている。
「国境じゃないのか?」
そう聞くと二股の道を指差し、「ヤラーマへはあっちだ、俺たちはこっちに行く。ここからタクシーだ、400TGで行けるからそれで行け」と言っている。
確かに荒地の中にはタクシーが4台停まっている。
他の乗客は早く出発させてとこっちを見ている。
慌てて降りると、ミニバスは土煙を上げて走り去っていった。
「…あ!」
すぐに手帳をバスの中に忘れててしまったことに気づいた。
でももうバスの姿は見えない。
ここまでの出費帳や友達のアドレス、パスポートのコピーなどを挟んでおいた手帳はどこかの町に運ばれてしまった。
そこから20分、変わらぬ荒地をタクシーは走っていく。
「ヤラーモゥ」
運転手が短くそう言うと、確かにそこに国境があった。
そこではカザフスタン人とウズベキスタン人が次から次へと出入国している。
「YALLMA」というところはちゃんと国境だった。
今日は無事に国境までたどり着けた。
あとは、第三国の人間が通過出来るのかどうか。
問題はそれだ。

***********

国境警備隊に近づき、悪印象を与えないようにとまずは「HI♪」と慣れた調子で挨拶を交わす。
さらに近づき、今度はムスリム圏のそれに習って、右手を胸にあてて、挨拶を交わす。
「アッサローム」
それから「日本人はここを通れるか?」と身振り手振りで訊いてみた。
警備隊はあっさり「ダー」と答えた。
「…ダ、ダー?」
「ダーダー」
そこにいた警備員4人全員がそう答えた。
ヤラーマ国境は開いていた。
これでウズベキスタンに入ることが出来る。
先に進もうとすると警備隊は笑いながら「MONEY」と言った。
「ん?」
炎天下の中、明るい賄賂要求。
「ん?ン?」
僕はマニーの意味が分からない振りを始める。
すると今度は親指と中指を擦って「これだよ、これ、マニー」と露骨に金を要求してきた。
「んん、ン?」
炎天下の中、彼は指を擦り、僕は「ん?ん?」と繰り返す。
そこへウズベク人が通った。
彼は警備員と握手を交わすと、呆気なく向こう側へと去っていく。
きつく握り合った手の平には札が挟まれている。
明るい握手で明るい賄賂は交わされていく。
それからも男は「マニーマニー」と賄賂を要求してくる。
「マニーってロシア語なのかなー」
それでもここに険悪な雰囲気はない。
スコンと晴れた青空のせいか、彼らの元々の性分か、明るい空気が流れている。
やがて男たちは「もう行きな」とあきらめた。

時計の針を1時間戻す。
日本との時差3時間、これがウズベク時間。

「…ちゃんとウズベキスタンこれたじゃん」
まずはここから70q、ウズベキスタンの首都「タシュケント」へ。
多少の興奮と達成感を感じながら、一本道を南に走っていく。
フロントガラスの先を眺めていると、そこには「逃げ水」が現れては消えていた。

2008/07/07(月) 『#22 ASIA 〜カザフスタン』
『悲しく嬉しい誤算』            7/8シュムケント




悪くはない。
悪くはないが、今日はやめようやめとこう。
朝起きて体調が回復していたら「YALLAMA」へ向かおうと思ったけど、今日はやめた。
ちゃんと回復はしていても、どこかしっくり来ない。
ビザの関係上、先を急ぎたいところでもここで倒れちゃ何の意味もない。
まだまだ先は長い。
「明日こそウズベキスタンへ」
そう。国境線「YALLAMA」行きのミニバスの調べはもうついている。
昨日運悪く乗り過ごしたら大きなバスターミナルに着いていた。
一応「ヤラーマ?」と訊いてみると、みんな口々に「ダーダー、ヤラーモゥ」と言っていた。
国境が閉まっていたのは悲しい誤算だとしても、つい乗り過ごしてしまったのは嬉しい誤算だった。
なんとかバランスは取れている。
あとの問題は本当に「YALLAMA」が第三国の人間に解放されているのかということだけだ。
これが一番大きい。
でももうそんなことを考えていてもしょうがない。
「…はあ、助かる」
湯気をすすり、スープをすする。
「うまい、すごくうまい」
キルギスで買った電熱コイルでマグカップに湯を沸かし、インスタント味噌汁をつくる。
海外で飲む味噌汁は体に染み込む。
うん。
かなり静養された気がする。

2008/07/06(日) 『#21 ASIA 〜カザフスタン』
『消えたボーダー』     7/7シュムケント



国境なんて消えてしまえばいい。
そうすればビザやパスポートがいらなくなる。
そう思っていた。
でも実際に国境が消えたら、すごく困った。

***********

トゥーリに教えてもらったミニバスに乗り、ウズベキスタンとの国境「ジベックジョル」にたどり着くと、案の定タクシーや物売りが僕を囲んだ。
「ヤポーニ!ヤポーニ!タクシー、タクシー!」
今国境に着いた外国人がタクシーに乗ると思うか。
「………」
でも適当なロシア語なんて分からない。
無視して国境へ歩いていく。
それでも彼らはぞろぞろとあとをついてくる。
みんな、僕の体を無遠慮に引っ張り、口々に騒いでいる。
炎天下の中、競うように体を触り、耳元で叫ぶもんだから煩わしくてしょうがない。
「ヤポーニ!ヤポーニ!ノージベックジョル、ヤラーマ!」
みんながそう言っている。
「ヤポーニ!ノージベックジョル、ヤラーモゥ!タクシ、タクシー!」
「ハ?」
「ノージベックジョル!ヤラーマ、ヤラーモゥ!」
「ノージベックジョル?」
「ダーダー(イエスイエス)」
「………」
無視して国境監視員のところへ向かう。
ノージベックジョル、ってなんだ。
ここはジベックジョルじゃない、ってことか。
そんなことあるか、何度も運転手に確認したし、ミニバスの看板にもジベックジョル行きって書いてあったじゃないか。
それにヤラーマ?ヤラーモゥ?ってなんだ。
そんな嘘をついてまで客つかまえたいか。

監視員の前に立ち、眉間に寄ったしわをとり笑顔に切り替えると「ここはジベックジョルだよねー?」と聞いてみる。
監視員はさらっと答える。
「二ェット(ノー)」
「え?二ェット?」
「ダー」
「………」
話を聞くと、ジベックジョルはここから2キロ先だと言っている。
混乱しつつも「…2キロか。歩けないことはないな」と考えていると、彼は続けた。
「ヤポーニ、ゴー、ヤラーマ」
「ヤ、ヤラーマ?」
「ヤラーマ」
ヤラーマって何だ。
話を聞くと、それは国境の名前だということが分かった。
つまり「ジベックジョルは最近閉鎖した、かわりに第三国の人間にはヤラーマ国境が開かれた、ヤラーマはここから20キロ先だ、ここからタクシーで100US$だ」ということらしい。
「え!100$!」
「ダーダー」
中央アジアを旅していて「YALLAMA」なんて地名聞いたことない。
どこまで正確な情報か分からないが、とりあえず分かった。
100$出してタクシーに乗る余分な金なんて持ってない。
とりあえずこれでまた振り出しに戻った。
「まずはシュムケントに戻って、ヤラーマ行きの情報を探して、それから、それから……」
徒労感に包まれながら、ひとまず1時間半かけて来た道を戻り、シュムケントの宿に戻ってきた。

その夜、体はやけにだるく、何度か嘔吐した。
ウズベキスタンがやけに遠く感じる。


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