マガッタ玉日記
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2008/07/06(日) 『#21 ASIA 〜カザフスタン』
『消えたボーダー』     7/7シュムケント



国境なんて消えてしまえばいい。
そうすればビザやパスポートがいらなくなる。
そう思っていた。
でも実際に国境が消えたら、すごく困った。

***********

トゥーリに教えてもらったミニバスに乗り、ウズベキスタンとの国境「ジベックジョル」にたどり着くと、案の定タクシーや物売りが僕を囲んだ。
「ヤポーニ!ヤポーニ!タクシー、タクシー!」
今国境に着いた外国人がタクシーに乗ると思うか。
「………」
でも適当なロシア語なんて分からない。
無視して国境へ歩いていく。
それでも彼らはぞろぞろとあとをついてくる。
みんな、僕の体を無遠慮に引っ張り、口々に騒いでいる。
炎天下の中、競うように体を触り、耳元で叫ぶもんだから煩わしくてしょうがない。
「ヤポーニ!ヤポーニ!ノージベックジョル、ヤラーマ!」
みんながそう言っている。
「ヤポーニ!ノージベックジョル、ヤラーモゥ!タクシ、タクシー!」
「ハ?」
「ノージベックジョル!ヤラーマ、ヤラーモゥ!」
「ノージベックジョル?」
「ダーダー(イエスイエス)」
「………」
無視して国境監視員のところへ向かう。
ノージベックジョル、ってなんだ。
ここはジベックジョルじゃない、ってことか。
そんなことあるか、何度も運転手に確認したし、ミニバスの看板にもジベックジョル行きって書いてあったじゃないか。
それにヤラーマ?ヤラーモゥ?ってなんだ。
そんな嘘をついてまで客つかまえたいか。

監視員の前に立ち、眉間に寄ったしわをとり笑顔に切り替えると「ここはジベックジョルだよねー?」と聞いてみる。
監視員はさらっと答える。
「二ェット(ノー)」
「え?二ェット?」
「ダー」
「………」
話を聞くと、ジベックジョルはここから2キロ先だと言っている。
混乱しつつも「…2キロか。歩けないことはないな」と考えていると、彼は続けた。
「ヤポーニ、ゴー、ヤラーマ」
「ヤ、ヤラーマ?」
「ヤラーマ」
ヤラーマって何だ。
話を聞くと、それは国境の名前だということが分かった。
つまり「ジベックジョルは最近閉鎖した、かわりに第三国の人間にはヤラーマ国境が開かれた、ヤラーマはここから20キロ先だ、ここからタクシーで100US$だ」ということらしい。
「え!100$!」
「ダーダー」
中央アジアを旅していて「YALLAMA」なんて地名聞いたことない。
どこまで正確な情報か分からないが、とりあえず分かった。
100$出してタクシーに乗る余分な金なんて持ってない。
とりあえずこれでまた振り出しに戻った。
「まずはシュムケントに戻って、ヤラーマ行きの情報を探して、それから、それから……」
徒労感に包まれながら、ひとまず1時間半かけて来た道を戻り、シュムケントの宿に戻ってきた。

その夜、体はやけにだるく、何度か嘔吐した。
ウズベキスタンがやけに遠く感じる。


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