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2008/07/11(金)
『#26 ASIA 〜ウズベキスタン』
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『タイム トリップ』 7/12ヒヴァ
「あっはっは!」 暑いとかそういうレベルじゃなかった。 これが噂の「ヒヴァ」か。 肌は「焼ける」よりも「焦げる」に近い。 肉を5,60度で炙り続ければ料理が出来る。 なんとかこの暑さから非難しようと日陰に移って壁に寄りかかるとそれがまた熱い。 「あっはっはっは!すげー暑ぃ!」 そうなると不思議なもんで僕は自然と笑い声を上げてしまう。 口元はにやりと曲がる。 過酷ならば過酷も良いかと、楽しくなってくる。
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「なんでこんな時期に来ちゃったかなー」 7月に入り、ウズベキスタンは今「酷暑期」に入った。 その中でもウズベキスタン西部「ヒヴァ」は暑く、60度ちかくをマークすることもある。 ここら一帯は年間300日は晴れどころか雲ひとつない日が続く「ホレズム州(太陽の国)」と呼ばれている。 そしてここには残虐で知られたチンギスハーン率いるモンゴル帝国の一つ、「古代ホレズム王朝」の遺跡群が小さな町に所狭しと建てられている。 中央アジア最大の奴隷市場都市、城壁内の町。 町自体が屈強な城壁内にあって、まるごと「世界遺産」「博物館都市」に認定された。 「…おお、すっげー!綺麗だなー」 城壁を越えるとそこには異国が広がっている。 国というよりも時間が異なっている。 タイムスリップ。 競い合うように土と煉瓦で造られた立派なモスク、メドレセ(神学校)、ミナレット(尖塔)のモノトーン世界にターコイズブルーのモスクタイルが鮮やかに輝いている。 「ここで奴隷が売買され、ここで毎日公開処刑がされていたのかあ」 強靭な肉体を持つロシア人はラクダ4頭で売られ、処刑は見せしめの出血死が多かったという。 隠れて煙草、酒をやった者は即、口を耳まで切り裂かれニタニタと笑い続けさせられる。 「へぇへぇ、なるほど」 何百人も身投げさせられたミナレットも今は観光の目玉の一つで。 僕はそこに登り、夕日を見つめては「綺麗だ」と何度も呟く。 時間ってのは不思議なもので。 ミナレットから眺める夕日は綺麗だった。 完璧な夕日は息を呑む。 スライム型のモスクに日は落ちていき、アラビアンナイトを想像させるシルエットにため息をつく。 「早く沈んで涼しくなれ」と思っていた太陽も「もっとゆっくり、もっとゆっくり沈んで」と矛盾したことを思い始める。 月にはもっと満ちてくれと願う。 青い月明かりに照らされたモスクは美しく、時を忘れて眺めていられる。
土産物の変わりに奴隷が売られていた時代に思いを馳せてみる。 だめだ。 何も想像できない。 ただ、時間って不思議なもんだと城内をしばらく眺めていた。
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