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2008/06/28(土)
『#13 ASIA 〜キルギス』
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6/28 『幻の湖』
テンションはあがる。 上へ上へ。 それを遠くから眺めたら、僕はまず叫ぶ。 「うわ、すっげー青!」 近づいたらまた叫ぶ。 「わお、すっげー透明!」 本日、幻の湖『イシク・クル湖』の近く「チョルポン・アタ」にやってきた。
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キルギスには「中央アジアの真珠」と呼ばれる湖がある。 ソ連時代まで外国人は立ち入り禁止で、天山山脈の山ひだに隠されたこの湖はかつて「幻の湖」と言われていた。 それが「イシク・クル湖」。 じゃあ今からチョルポン・アタ行きのバスを捕まえて、幻を解きに行こう。
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宿にでかいバックパックを預け、小さなリュックにここ数日必要なものだけを詰め込む。 「んじゃ行ってきます」 カザフスタンビザがおりるまで、3,4日ビシュケクを離れることにした。 僕はマルシュルートカ(ミニバス)に揺られてチョルポン・アタを目指す。 赤茶に続く地平線を眺めながら、お気に入りの曲をかけていくと次第にテンションはあがっていく。 そうして走ること数時間、突然地平線の色が変わった。 真っ青に輝く地平線。 「…え?」 いや、これは地平線じゃない。 これは、水平線? ってことはこれがイシク・クル湖。
内陸国キルギスにも海はあった。 東西180キロ、南北70キロ。 その湖はとにかく真っ青ででかかった。 「すっげー青!」 僕はこの湖が見たかった。 僕にとってキルギス一番のハイライトはこの湖だったんで。 不思議な湖。 神秘の湖。 遠くからは真っ青に見えた湖も近づけば湖底が覗けるほど透明度が高い。 この湖には三つの不思議がある。 一つ目は世界第二の高山湖、海抜1600mに位置しているのになぜか凍らないこと。 イシク・クルってのはキルギス語で『熱い湖』って意味だそうで。 二つ目はこの湖に流れ込む川は100を越えるのに、なぜか流れ出る川が一つもないこと。 それでも溢れることなくバランスを保ち続けている。 そして三つ目はこの湖底には謎の集落が沈んでいること。 「え、湖に沈んでるの!?」 いつ、どこの何族が暮らしていたかも分からない謎の集落が沈んでいるらしい。 「え、ダムじゃなくて、湖に?うそぅ!」 その証拠に世界屈指の透明度を誇るこの湖は上空からその集落が見える。 なぜ? ダムなら分かる。 ダムは人が作るから。 村をダム底に沈めることはたやすい。 海も分かる。 海抜は年々上がってきている。 現に今にも海に沈みそうな国もある。 だから海底都市も説明がつく。 でも湖はそうもいかない。 なぜ湖のそこに村がある。 湖がある日自然発生したわけでもなかろうに。 「…なぜに、なぜによ」 ない頭で考えたところで出る答えはない。 それでもそんなことを考えながら、陽は沈んでいく。
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夜、小便をしようと離れの便所に行くと息が止まった。 「星、すっげー!」 慌てて宿の光も届かない草原に恐る恐る歩いていく。 適当なところでヘッドライトを消し、上を見上げると天の川が見えた。 「天の川ぁぁぁぁぁ」 天の川に流れ星が駆け込んでいく。 「流れ星ぃぃぃぃぃ」 すごく綺麗な星空だった。 が、ここは我慢。 これ以上はやめておこう。 確かにすごく綺麗だが、ここはぐっと堪えて我慢だ。 僕は宿へ戻りながら、一人つぶやく。 「アルティン・アラシャンはこんなもんじゃないはずだアルティン・アラシャンは…」 とかなんとか。 夜空の楽しみはまた明日。 明日は電気もない山小屋に向かおう。 そう思うよ。
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