マガッタ玉日記
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2008/04/11(金) 『ジャリ銭とジャリ坊』
小学生の頃の僕の愛読書は「ちびまるこちゃん」だった。
新刊が出る度、妹にお願いして買ってきてもらっていた。
もちろん「りぼん」での最新話チェックも怠らない。
まるちゃんのような明るい子に憧れ、たまちゃんのような優しい子に憧れ、大野君と杉山君のような格好良い男に憧れ、山田のような元気な子に憧れた。
でもちょっとしたことですぐ十二指腸がきしみだす僕は山根君である。
唇が青くなる程度でいいな。
藤木君にさえ憧れる男である。
でも今日は思う。
小さくたっていいじゃない。
小さなことからこつこつやればいいじゃない。
今日はそんなお話。

***********

3年前、財布が壊れた。
一度愛着持ったものはバイクだろうと財布だろうとその寿命が全うするまで使い続ける。
物の大切さを知った男である。

「お前の代わりを見つけるなんて出来ないよ」
愛に満ち溢れた男でもある。

次の日から小銭は右ポケットに、お札は後ろポケットに入れる事にした。
「そもそも金入れる為のもんに金なんて払ってられるか」
本当、こだわりのある男である。

家に帰れば金の置き場がないので、机の上に置いておくことにした。
お札は丁寧に置き、ジャリ銭は乱暴に叩き置く。
「お札の方が偉いんじゃこのジャリ銭が」
ちゃんと社会を知ってる男である。

酔っ払って帰ったある日、ふらふらと手元に落とした100円硬貨を1枚、やはりたまたま手元にあった透明なロックグラスに入れた。
「おお、100円貯金じゃん」
偶然を必然に出来る男である。

そして次の日、男はしらふだったが手元の100円硬貨を昨日のロックグラスになんとなくまた入れていた。
「毎日続けてこそ意味あんじゃん、でもジャリ銭じゃたかが知れてるじゃん・・・」
事の真理を知ってる男でもある。

そして男はその次の日も、その次の次の日も余った100円硬貨をロックグラスに放り込んでいった。
「今日は3枚じゃん!」
「今日は4枚じゃん!」
こうして日々成長を遂げていく男である。
一度決めたことはやり通すんである。

こうなるとこの男、もう目が離せない。

「今日は600円じゃん!本当は缶コーヒー買いたかったけど我慢したんじゃん!」
「今日は300円か。でもグラスに入りきらなくなってきたな」
「今日は100円で我慢じゃん。だってでかいガラスの入れモン買ってきたんじゃん」
「今日は400円じゃ。ロックグラスがいっぱいになる度に移してあげるじゃん」
「今日はどうしよ。グラスすかすかだな。移した次の日はちょっと寂しいな。500円だ」
「今日は100円で我慢じゃん。またでかいグラス買ってきたんじゃん」
「今日は月末だから移し変えの日か。30になったら好きなことに使うんじゃん!」
「今月も移し変えの時期じゃん。頑張ったじゃん。優等生じゃん」
「今月の上納金少ないじゃん・・・500円硬貨投入じゃん」
「タバコすっげー吸いたいじゃん・・・でも今お金ないじゃん・・・」
「お、おい!その金にだけは手ぇつけちゃダメじゃん、今日は禁煙じゃん」

こうしてじゃんじゃんじゃんじゃん入れ続けた。
で、なんとなく続けるうちに3年が経っていた。
そして。
「・・・123456789・・・123456789」
僕は今日、ルールを破った。
いや。正確には破ることにした、か。
「30になったら好きなことに使うんじゃん!」
前言撤回。
27で使うことにした。

2008年、6月上旬。
アジア一周の旅に出よう。
でも、金貯めてる時間がない。
ということであの日「ジャリ銭」と馬鹿にされた100円の力にスポットが当たる時が来た。
この金を持って世界半年の旅。

稽古の傍ら、準備は粛々と進められている。


小さなことからこつこつと。
いつかは花も咲きましょう。

2008/04/09(水) 『椎谷陽 二』
3月31日。
このブログに文章を書いた。
タイトルは「椎谷陽一」。
次の日、陽一君から一通のメールが届いた。
「崇、俺のハゲネタ使い過ぎ」
ははは。

そんなことはさておき、僕は貧乏性だ。
あ、話は変わる。
僕はずっと自分を貧乏性だと思っていた。
一時は貧乏性過ぎて体調をおかしくもした。
だから僕は人に胸を張れるくらいの貧乏性だと思っている。
でも「節約」と「無一文」の意味は大きく違う。

ということで人の振り見りゃ自分が見える、今日はそんなお話。

***********

数日前の稽古場。

「じゃあ今日の稽古はこれでとります、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした!」

僕は脱兎の如く便所に向かった。
この貧乏性にも困ったもんだ。
もったいないの精神100%で出来上がってるこの体は尿意さえもったいなく感じる。
だから溜めて溜めて、稽古後ようやく便所に向かえる。

「・・・はあ、すっきりした」

で、洗面所でふと鏡を見る。
と驚く。
「・・・うわ、髪伸びたな」
気づけば僕はもうロンゲの域に達していた。
「・・・やだなあ」
僕は男が髪をかきあげる仕草が嫌いなんで。
だから男のロンゲってもんが嫌いだ。
なんか二つ折りの携帯を小気味よく開くくらい嫌いだ。
なんか旅館で靴べらを迷いよく使うくらい嫌いだ。
どの仕草もなんか格好良過ぎる。
いつだって「過ぎる」はいけない。
謙虚に生きていこう。
でも僕だって髪が伸びればやっぱり髪をかきあげちまう。
「ああ、邪魔だな・・・」
僕は髪をかきあげながら鏡を覗き込む。
と、それを眺める者が右端に映っていた。

「・・・あ。」

椎谷陽一だ。
「お疲れさんす」
「お疲れさんす」
そこで僕は気付く。
ああ、そっか。僕は裕福だった。僕はふさふさだった。人の振り見りゃ自分が見える。

そして今日、二人で飲んでいるときに彼は語った。
「俺は中途半端だよ。どうせなら伊武雅刀とか竹中直人とかまで行きたいよ」
なんか、格好良い。
「陽一君、いっそキューピーちゃん見たいなのまでいったらどうなのよ?」
「崇、あのハゲかたは難しいんだよ」
なんか、格好良い。専門家の話を聞いてるようだ。

ということで僕は浅はかだった。
なんでも「過ぎる」ってのはいけないことだと思っていたが、
例えば陽一君の場合、早く「過ぎて」しまうことが幸せなんだな。
これからは陰ながら陽一君を応援する。
滅多に人には言わないけど、今日だけは。

頑張れ!





苦情メール、お待ちしております。

2008/04/06(日) 『出来の悪い息子にゃ熱を与えよ』
「・・・なぜよ、なぜなんよ」

細かい作業は任せとけ。
僕の手先は結構器用なんである。
だから僕の図工プライドの壁は高い。

***********

あ。
いかん。
春の陽気に誘われて深い眠りに落ちていた。
目覚めるとそこはもう目的地だった。
「わあお」
田舎のプラットホーム。
タンポポやつくしがよく似合う風景はいつだってのんびりしてる。
ぜんぶひらがなのいめーじ。
ぷしゅーっとしまるドアの音にも趣がある。
ったんごとんったんごとん
音一つ一つが元気に聞こえる。
「来てよかったなー」
のんびりと大きく伸びを一つ。
ティシャツに風が通る。
うん。
東京では散り始めた桜も関西は今が旬。
遠く山の麓に色を添える。
後ろ手組んで老人みたいに歩く風景。
でも目的地はここじゃない。

JR福知山線・相野駅からバスに揺られ、更に山の中へ。
「次は陶の里、陶の里」
今日は奈良の曽爾高原メンバー三人で兵庫にやってきた。
目的地はここ、丹波立杭・陶の里(たんばたちくい・すえのさと)。
「わあ、あのやまいいねえ」
バスから降りるとのんびりさは更に増す。
空を見渡すと至るところでのんびりと煙が上がっている。
その煙の先を追っていくと焼き窯がある。
陶器が熱され、赤々と燃えている。
焼き物が盛んな土地。

兵庫県中東部、丹波の西南端。
ここ「立杭」は800年以上の歴史を持つ丹波焼きの地で。
どれ、一つ陶芸でもしてみまひょか。

「多分、俺が一番うまいよ!」
「いやあ、私でしょ!」
「俺はだめやろな」

一様に手動ろくろを回し始める。
「・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
時間が経つにつれ、皆、無言になっていく。
今、会話する相手はお前じゃない。
土。
そう、土だ。
陶芸とは土との対話だ。
みんな真剣な眼差しで土を見つめる。
でも土は無口だった。
「・・おい・・オイ・・会話しようぜ・・オイ」
この野郎はうんともすんとも言わない。
この野郎は僕らの言う事を全く聞かない。
「・・・なぜよ、なぜなんよ」
僕の図工プライドの壁はことごとく崩れていく。
プライドの瓦礫をまた拾い集めて、土台から作り直す。
んん。
「土は生き物ですから」
陶芸家がそう口にするのも頷ける。
僕の意思とは違う形に成長していく。
素直に育ってくれないものか。

結果、出来上がった二作品。
四角く無骨な「男湯呑み」と丸くお洒落な「女湯呑み」。
まあうまいとは言えないが、きっと陶器の味ってのは焼きあがったあとに出てくるもんだ。
出来の悪い息子ほど可愛いってもんだ。
だから送り先は実家にしといた。
焼き上がりは1ヵ月半後。
うまく焼けていたら、これでのんびりと茶でもすすってくれ。
うまく焼けてなかったら、焼いた人に図工センスがなかったと思ってくれ。

2008/04/05(土) 『天国か地獄か冷静に見極めよ』
知ってる人は教えて欲しい。
人は死んだらどこにいくのか。
輪廻転生は存在するのか。
本当に天国と地獄ってのは存在するのか。
もし存在するなら僕が死んだら、どっちに行くのか。
天国、か地獄か。
どっちが良物件なのか。
どっちが風呂付きなのか。
それを冷静に見極めてから、住み良い方に行きたい。
ということで今日はひとまず、天国と地獄を覗いてきた。

***********

大阪、平野、全興寺。

「・・・お邪魔しまーす・・・あ、どうも初めまして、いやあさすが。すごい、すごい風格、抜群の貫禄じゃないっすか閻魔さん」

今日、閻魔大王と会ってきた。
着物着込んで意気込んで。
春の陽気に誘われて。
シャツも着ないで直接着物着ちゃったもんだから乳首が痛い。
擦れて擦れてしょうがない。
痛さで眉間に皺が寄る。
でも閻魔さんは眉一つ動かさず、人形みたいな奴だった。
噂通り固い。
でもめげちゃいけない。
仲良くなろう。
「あ、申し遅れました。自分、中村って言います。日本人っす。隣人愛してねえっす、豚肉好きっす」
眉一つ動かさない。
何だよ。無反応かよ。
「・・・聞きましたよ、閻魔さん、ああた元々人間らしっすねー。はは、人類最初の死者だとか」
彼の一存で僕たちの来世は決まる。
だったら今のうちに胡麻を擦っとけ。
仲良くなっとけば、将来安泰。
「に、しても狭いっすねー」
にしても地獄は狭かった。
僕はてっきり地獄ってのは広いもんだと思っていた。
一畳半かよ。
閻魔様もなんだか窮屈そうで、いたたまれない。
そこによく分からん鬼とよく分からん婆さんもいるもんだから、僕の入るスペースなぞそうはない。
「なんだよ、つけいる隙なしってか」
地獄、定員オーバー。

じゃあ天国はどうだろう。
併設されてる「ほとけのくに」はなかなかに面白かった。
地下に作られた空間は暗く、床はステンドグラスの曼荼羅が輝いていた。
「・・・綺麗だな」
雪駄を脱ぎ、たもとを整え、曼荼羅の中心で座を組んでみる。
うん。
天国、良いな。

よし。
80になったら天国行こ。

2008/04/03(木) 『なんだかなあな青春日記』
ああ、来たな。

静かな住宅街にドッドッドッドッと重低音が響いてきたらそれが合図。
30秒後には部屋のドアが開く。

・・・・・・・・。

ほら。
「うぃーっす、起きてる中ちゃん?」
「起きてんよー、久し振り」
「久し振り」
「んでどうする?」
「・・・うーん」
「せっかくだから桜でも見に行きますか」
とかなんとか。
友達の点けたタバコも消えぬうちにまた重低音を響かせる。
別になんてことはない。
ただ懐かしい感覚だな、そう感じたそんな話。

***********

「今日あったけーな」
「あったけーな。昼ティシャツでいけたもんな」
甲州街道を真っ直ぐ西へ。
行き先は井の頭公園と上野公園以外のどこか。
友達の車に揺られ、西東京を目指す。
いわゆるドリフト仕様の彼の車は心地良い重低音がする。
内部はよくあるそれと同じで、ブラックライトが灯り、車内を青く照らしている。
「調布の方に野川って大したことない川があんだわ。とりあえずそこ目指してみますか」
「桜あんの?」
「確か」
「いーっす」
昔の記憶が確かなら、河沿いに桜の樹がずらっと並んでいるはずだ。
目的地が決まれば、速度もあがる。
クラッチが踏まれるたびに車体は軽く揺れ、僕らも揺れる。
「何これ?この曲もユーロビートって奴?」
「んだね、一応」
「なんか懐かしい曲だな、聞いたことあるわ。うわ、誰だっけ?」
「・・・あれ、誰だっけ?えっとね」
「ドゥッビドゥッビドッビドゥドゥドゥアイノゥニージョーラァブ、歌えんだよなあ」
「・・・あれ、誰だっけ。ドゥッビドゥッビドゥビドゥドゥ」
「あ、シャンプー!シャンプーじゃね!?」
「あ!ちげーミー&マイだ!」
「あ、そうか!ミー&マイだ!懐かしいなー、静かな曲に替えよーぜ」
「あいよ、何にする?」
「あ、そこ右」
「あいよ」
「あ、そういや赤坂のラジオ聞いてる?」
「オールザットレディオ?前の金曜で終わったのね」
「そうなんだよ。なんだかなあ、だなあ」
「なあ」

高校時分の夜はよく、こんな風に約束もなく集まっては、ふらふらしていた。
いわゆる「溜まり場」って部屋にいけば既に数人がゴロゴロしていて、散歩かサイクリングか、せめて可愛い賭け事なんかをして熱を発散していた。
不良になる勇気も根性もない僕たちは毎日くすぶっていた。
血まみれの殴り合いでもしてみりゃいいけど、そんな勇気は持ち合わせていない。
でもくすぶりっぱなしは嫌だった。
セックス・ドラッグ・ロックンロール。
それは憧れ。
実際は、パチンコ・ビリヤード・サボテン育成。
教室の窓際にサボテンをコレクションして和む毎日だった。

「そういや中ちゃん、俺別れたんだわ」
「・・・え、マジで?あの子?」
「そ、あの子」
「そっかあ」
「そうだあ」
「なんだかなあ、だなあ」
「なんだかなあ、だな」

今は学校が仕事に、自転車が車に、仙台が東京に変わっただけ。
俺ら成長してねえなあ。
なんて青春映画みたいに思いを馳せる。
僕はよく昔の思い出に思いを馳せる。
それは年を食ってきた証拠なんだろうか。
延長だなあ。
「んじゃまた」
「んじゃまた」
相変らずの素っ気ない別れ方。
それがまた懐かしい。

とかなんとか。
今は熱を燃やせる場所がある。
くすぶってはいない。
ただそれだけの話。

4月はよく地元を思い出す。

2008/04/01(火) 『軟弱者にゃ故郷は遠く』
4月1日。
そうか今日は4月1日か。
1999。
思い出せば馬鹿げているが、あの時僕は本当に必死だった。
故郷を必死で探してた。
ぬくぬく温室で育った軟弱者にゃ「東京」ってのは本当に広くて怖かったんだ。

***********

「んじゃ、行ってきます!」
中学高校時代の友達、彼女に見送られ、僕は笑顔で仙台駅を離れていった。
行き先は遠く遠く、東京へ。
ゆっくりと新幹線は走り出す。
友達は一斉にホームを走り出し、新幹線を追いかけた。
彼女は寂しそうな顔でホームにぽつんと立っていた。
僕はタオルを口に詰っ込み、声が漏れるのを必死で抑えていた。
それでも嗚咽は止まらなかった。
2時間と少し、ただただ泣きじゃくっていたら、そこはもう東京だった。
近い。
「ひっく、ひっく、も、もう、東京だ、もうきちまった」
泣きすぎたせいでいつまでたってもしゃっくりが止まらない。
「ひっく、わ、わけわかんない、け、京王線ってひっく、どこだよ、わけわかんない、ここは、どこだよー?」
東京駅。
ついさっき感動の別れをしたばかりなのに、すぐに地元の友達に電話した。
「ね、ねえ、佐久間ぁ、ひっくおりぇ、ひっくおれぇ、今どこにいるんだよー?分かんないよー」
佐久間は18にして二度も東京に来たことがあるわが町随一の東京通だった。
「え?え?何?泣いてんの?え?周りに人いっぱいいるでしょ?優しそうな人探して道聞いてごらん」
「ひっ、い、いっぱいいすぎてわかりゃないよー」
「え?じゃあ中ちゃん、看板見て看板。上の方に電車の名前書いてあるでしょ?」
「う、うん。ひっく、ある、さすが、ひっく、佐久間」
「じゃあそれに従って歩いていきなよ。中ちゃん、京・王・線ね、上に書いてあるはずだから」
「あ、あ、ありがとひっく、佐久間、本当、ひっく、ありがとー」
「え、うん。中ちゃん、頑張んだよ!」
「あ、あった、京・王・線あった、佐久間あったよ!」
「中ちゃん声おっきいよ。各・駅・停・車に乗んだよ」
「うん、ひっく、各・駅・停・車に乗る。家ついたら、ま、また、電話するからひっく」

なんで東京なんてきちまったんだ。
誰に頼まれたわけでもないのになんでお前は東京きちまったんだ。
上京早々、深く後悔した。
でもこうなることは予想していた。
だから僕は4月1日に上京することにした。
「あはは、すべて嘘だよ!エイプリルフールだよ!!」
みんなが冷たい目で見ようとも、みんなが笑わなくてもそう言えるからこの日に上京した。

「舞浜ぁ、次は舞浜ぁ、です」
涙もしゃっくりも止まりかけた頃、僕は電車を降りた。
そしてまた佐久間に電話した。

「さ、佐久間、な、なんでだよー、俺、ディズニーランドにきちゃったよー、ここは、どこだよー、舞浜ってなにー、なんで、調布市はどこ?布田駅ってどこにあんだよー?」
「中ちゃん、なんでそんなとこいんの?舞浜って千葉だよ。そこもう東京じゃないよ。あのさ。中ちゃんあのさ、聞いて、ちゃんと京王線乗った?」
「の、乗ったよー」
「本当?」
「本当だよー・・・あ。」
「何?」
「いやなんでもない」
「分かった。中ちゃん、東京に詳しい人に電話して聞いてあげるからちょっと待ってて」
「あ、いや。やっぱいい。自分でなんとかしてみるからありがとー」
知らなかった。東京には京王線と京葉線ってのがあるんだ。

それから数ヶ月、少しずつ東京にも慣れてきた。
心配してたまに電話をかけてくる佐久間に僕は最新の東京を得意になって教えてあげた。
「なあ、知ってっか?調布市と田園調布は違うんだぞ」

東京ってのはほんとにややこしい。

そんなこんなで今日は4月1日。
上京10年目に差し掛かった。

最近じゃ旅行から帰ってくる度に思うことがある。
東京も故郷になりつつある。
コンビニにほっとするようになった。
だいぶ懐かしい街になってきた。


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