マガッタ玉日記
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2008/04/06(日) 『出来の悪い息子にゃ熱を与えよ』
「・・・なぜよ、なぜなんよ」

細かい作業は任せとけ。
僕の手先は結構器用なんである。
だから僕の図工プライドの壁は高い。

***********

あ。
いかん。
春の陽気に誘われて深い眠りに落ちていた。
目覚めるとそこはもう目的地だった。
「わあお」
田舎のプラットホーム。
タンポポやつくしがよく似合う風景はいつだってのんびりしてる。
ぜんぶひらがなのいめーじ。
ぷしゅーっとしまるドアの音にも趣がある。
ったんごとんったんごとん
音一つ一つが元気に聞こえる。
「来てよかったなー」
のんびりと大きく伸びを一つ。
ティシャツに風が通る。
うん。
東京では散り始めた桜も関西は今が旬。
遠く山の麓に色を添える。
後ろ手組んで老人みたいに歩く風景。
でも目的地はここじゃない。

JR福知山線・相野駅からバスに揺られ、更に山の中へ。
「次は陶の里、陶の里」
今日は奈良の曽爾高原メンバー三人で兵庫にやってきた。
目的地はここ、丹波立杭・陶の里(たんばたちくい・すえのさと)。
「わあ、あのやまいいねえ」
バスから降りるとのんびりさは更に増す。
空を見渡すと至るところでのんびりと煙が上がっている。
その煙の先を追っていくと焼き窯がある。
陶器が熱され、赤々と燃えている。
焼き物が盛んな土地。

兵庫県中東部、丹波の西南端。
ここ「立杭」は800年以上の歴史を持つ丹波焼きの地で。
どれ、一つ陶芸でもしてみまひょか。

「多分、俺が一番うまいよ!」
「いやあ、私でしょ!」
「俺はだめやろな」

一様に手動ろくろを回し始める。
「・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
時間が経つにつれ、皆、無言になっていく。
今、会話する相手はお前じゃない。
土。
そう、土だ。
陶芸とは土との対話だ。
みんな真剣な眼差しで土を見つめる。
でも土は無口だった。
「・・おい・・オイ・・会話しようぜ・・オイ」
この野郎はうんともすんとも言わない。
この野郎は僕らの言う事を全く聞かない。
「・・・なぜよ、なぜなんよ」
僕の図工プライドの壁はことごとく崩れていく。
プライドの瓦礫をまた拾い集めて、土台から作り直す。
んん。
「土は生き物ですから」
陶芸家がそう口にするのも頷ける。
僕の意思とは違う形に成長していく。
素直に育ってくれないものか。

結果、出来上がった二作品。
四角く無骨な「男湯呑み」と丸くお洒落な「女湯呑み」。
まあうまいとは言えないが、きっと陶器の味ってのは焼きあがったあとに出てくるもんだ。
出来の悪い息子ほど可愛いってもんだ。
だから送り先は実家にしといた。
焼き上がりは1ヵ月半後。
うまく焼けていたら、これでのんびりと茶でもすすってくれ。
うまく焼けてなかったら、焼いた人に図工センスがなかったと思ってくれ。


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