|
2008/04/25(金)
『♂13』
|
|
|
綺麗に澄んだ青空の下、彼女が言う。 「綺麗だねー」 そんな彼女を見て、僕は返す。 「ああ、綺麗だ」
洒落ている。 今日の僕らは洒落ている。 優雅なクラシックでも流してくれないか。 そんな気分だ。 蜜蜂ブンブン、空に舞え。 「ああ、ブンブンも綺麗だ」 今日はいちいち洒落ている。 そんなことを思ったのは10年ほど前。 バラ園に行った。 そこでは見渡す限り、綺麗なバラたちが咲き誇っていた。 「バラ、バラ、バラ。色んなバラがあるんだね」 うん。 当たり前だ。 でも今日は全てが洒落ている。 そんな気分だ。 僕は一輪のバラに手を伸ばす。 そして顔を近づける。 「うん、良い匂いだ」 胸いっぱいに吸い込む。 バラの匂いが肺胞全てに行き渡る。 「・・・・あ」 そして吐く。 僕は花壇に咲き誇るバラにビシャビシャビシャと嘔吐する。 参った。 空気に飲まれ過ぎた。 僕は「匂い」に弱いんで。
***********
「毛皮のマリー」は男ばかりが13人。 今まで男ばかりの稽古場というのは何度かあったが、 「男だけ」ってのは初めてなんで。
「おはよーございます、・・・という相手もなし、フフ」 僕は大抵一番乗りで稽古場に入る。 そこでまずするのは換気。 換気扇、扉、窓を全開放し、新鮮な空気を送り込む。 「・・・ふう」 男が数人集まると、男臭いんで。 汗ほとばしる、とか熱を帯びた、とかではなく匂いの話。 僕は匂いに弱い。 すぐに脳みそがぐらぐら揺れる。 記憶を司る脳みそと嗅覚は一番密接につながっているそうだ。 なるほど。 すぐに部室の思い出が蘇る。 部室の思い出。 「・・・崇君・・・別れよう」 中三のバレンタインデーに呼び出された部室でそう言われた。 「男子部室に一人できて」 なぜ男子部室?でもまあ今日はバレンタインだ、とチョコをもらいにいったら振られた。 なんとまあ。 話が逸れた。 話は戻り、話は変わる。 ところで男臭い、これってなんだろう。 「男臭い」ってなんだろう。 不思議な匂いで。 たとえば前に男10人女2人という舞台があった。 でもあの時は「男臭く」なかった。 男が数人集まれば自然発生する匂いだと思っていたが、どうだろう。 女の子が一人でもいれば、「男臭さ」は中和される。 ってことは女の子が消してくれてんのか。 そんな話聞いたことないが、なんだか正解なような気がする。 それとも女の子がいない時だけ男は「男臭い」匂いを放つのか。 または女の子が「男臭い」匂いを消してくれる「女臭い」匂いを出しているのか。 「女臭い」。 面白い。 もし「女臭い」が「男臭い」を消してるなら、 10:2で男臭いがなくなるから、 「女臭い」は「男臭い」の5倍匂うのか。 なんだろう。 面白い。 「男臭いvs女臭い」 今度、そこいらの女子をつかまえて、議論してみたい。 誰か付き合ってくれないか。
で、今日衣装が届いた。 皆一様に着替え、それぞれの役に代わっていく。 毛皮のマリー。 男娼たちのお話である。 13人の男のほとんどが女になっていく。 女臭くなっていく。 で、ここでもう一度匂いを嗅いでみる。
うん。
|
|
|
|