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2008/02/29(金)
『僕がワニ。』
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『ワニの涙』の本番も近くなってきたということで、 ここは一つ、僕がワニだった頃の話をしよう。 そう。 昔僕はワニだった。 冗談ではなくワニだった。 大丈夫。 おかしくなんかなっていない。 ちゃんと記憶はある。 昔僕はワニだった。 そう昔の話じゃない。 つい5年前の話だ。 僕は1年間ワニとして生き、ワニとして暮らし、ワニとして食べていた。 そう。僕は昔、日本中の小学生から可愛がられるワニだった。 涙なしでは語れない。
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「ワニはワニですワァニィ!」
僕がおどけてそう言えば日本中の子供たちが喜んだ。
「んん、なんでワニ?」
僕がおどけてそう言えば日本中の子供たちが笑い転げた。 そう。 僕はワニだった。 4tトラックとライトバンで北は青森から南は沖縄まで移動するワニだった。 「俺、日本一のワニになる!」 そして日本全国の小学校を回った。 1年間で220回ワニになった。 炎天下の沖縄だろうと、極寒の青森だろうと腹にスケボーを隠し、滑るように歩くワニになった。 ピーターパンに利用され、フック船長に嫌われるワニ、船長を襲ってる振りをして必死に大船を転換してあげるワニ。 「お兄ちゃーん、また来るねー!」 鹿児島の片田舎、バラシ中、最後まで喋らず、それでもずっと僕の横にいたおかっぱの女の子。 「また来るねー!」 トラックを追いかけながらその子は最後に叫んだ。 「また来るねー!」 来たのは僕たちだ。でも女の子が叫んだ。 「また来るねー!」 あの女の子の悲しい笑顔は忘れない。 「また来るねー」、か。 いかん。涙が。 テッシュをおくれ。
そう。 ピーターパンの「時計ワニ」。 それが僕の初舞台だった。 そう。その頃、僕はワニだった。 ワニだったんだ。 と同時にお話の前半は犬だったりもした。 この着ぐるみがまた暑い。 「崇君、冬はあったかそうだね」 冗談じゃない。 暑い。 冬でも暑い。 そう。 その頃僕はダーリング家の犬だった。 犬だったんだ。 ピーターパンの影を捕まえたのに、ネバーランドに連れて行ってもらえなかった犬。 それでも必死に尻尾を振った。 くしゃくしゃに汚れた犬、「ナナ」。 中に着た全身タイツもびしょびしょだ。 大丈夫。 替えの全身タイツは持っている。 ワニだろうと犬だろうと着ぐるみを身に纏い、笑顔を振り撒いた。 ピーターパンの魔法の粉なんか目じゃない。 ワニの笑顔は子供たちみんなを幸せにした。 そう誰が何と言おうと、犬ワニが子供たちを幸せにしたんだ。 あ。 また涙が。
つまり。 つまりだ。 僕が何を言いたいかっていうと。
今回僕は、「ワニの涙」で、「人間の役」なんである。
でも、あれはあれで、日本回れたし楽しかったなあ。
注※「ワニの涙」にワニは出てきません。 みんな人間です。
そして。 うるう年。
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