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2008/12/28(日)
『#LAST ASIA 〜 日本』
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「○○は家に帰るまでが○○だからね」なんて話をよく聞くけれど、どうやら「旅の終わり」ってのはそういうもんじゃないらしい。 どうやら帰国や帰宅のときだけじゃないようで。 例えば僕なんかは帰国に実感がなかった分、それはあまりに突然のことのように感じた。 全身の力が抜け、直後全身に力を入れていた。 とかなんとか。 今日は、まあそういう最終回で。
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大坂梅田駅の人だかりを大きなバックと小さなバックのサンドイッチでとぼとぼ歩いてると、ああ本当に東京に帰るんだなあと僕は少し感傷的になっていた。 実感がなかった。 ここ半年色んな人、事、物と遊んで色んな常識が移り変わっていたからきっとそれはしょうがない。 本当に帰るんだよな、だから半信半疑はなくならない。 でも買い溜めしていた中国産のタバコももう切れた。 僕は安い包装紙の中国タバコをくしゃくしゃに握り潰すと梅田駅内の自動販売機に千円札を飲み込ませた。 懐かしのマイセンスーパーライトのボタンを押す。 でも販売機は反応しなかった。 僕は数秒困惑する。 やがて自動販売機は丁寧な機械音で言った。 「タスポヲイレテクダサイ」 そこで僕は思う。 「…ああ、終わった」 なんとなくその場に立ち尽くしていると、飲み込んだ千円札が再び戻ってきた。 僕は全身の力が抜ける。 直後奮起しようと全身に力を入れた。 なんだかよく分からないけど、これが今回の僕の旅の終わりだった。 タスポのせいで僕はもう顔をぐしゃぐしゃにして泣きたい気分だった。 「タスポ、タスポって、…そんなんあったなあ!」 僕は千円札を財布に戻し、東京行きバス乗り場に向かった。 「…よし」 東京に帰ってまずすることはタスポ申請か。
とかなんとか。 僕は今日で28歳になった。 やっぱり28の僕もどこかに行っているんだろう。 最後の一夜。 デコボコの少ない高速バスで眼を覚ませば僕は「東京」に帰っている。
『ASIA』 2008.6.6〜12.28 Nakamura Takashi end
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