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2008/01/16(水)
『27CHINA #5』
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『#5 全て許される』 (杭州)
薄く靄のかかった湖を前にいる。 そういえばこの旅行中に晴天は一日もなかった。 湖の奥には山が連なっている。 山よりも峰といったほうが合ってるかも知れない。 そんな峰々にも薄く靄がかかっている。 夕暮れ時。 少しずつ太陽が沈んでいく。 太陽にも靄はかかっている。 オレンジ色の光は靄を染める。 夕焼け。 西日になった太陽はまだはっきりと輪郭をみせていない。 やがて赤く染まっていくと、ようやく丸い形を現し始めた。 たまに夕陽を眺める。 それは良いことだ。 ここから5分間は一番物思いに浸りやすい時間帯だ。 群青に変わるまでの5分、 育ちの良い黄身みたいな太陽を眺める。 思っていたよりも速いスピードで太陽は峰々の間に沈んでいく。 地球が回ってる。 太陽が沈む速さはそのまま自転の速さだ。 なんとなく嬉しい発見だった。
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蘇州から南西へ3時間、杭州にやってきた。 ついてすぐに「西湖」を散策してみた。 杭州は湖が有名な町なんである。 ここでは綺麗な夕陽とそれを映やす湖が手軽に見られるのだ。 だから自然と観光客が集まってくる。 だからセレブリティ溢れる町だった。 綺麗な店が並び、綺麗な道が続く。 蘇州では見られなかった西欧人観光客もちらほらと見受けられた。
湖沿いのユースホステルに宿をとると、僕はひたすら歩いた。
「今日はゆっくり休んで明日一日で観光しよう」
そう思ってたのに、西湖周りの観光名所をひた歩いてた。 周囲15kmの西湖をひた歩く。
「このまま一周しちゃうんじゃないか!」
セレブリティな町をセレブレティに歩く。 でもすぐに断念。 これじゃ足が棒になっちゃうよ。 どれだけ歩いたろう。 しかし地図を見れば3分の1にも達していなかった。
夜は「彷古街」を歩く。 ひた歩く。 「彷古街」、なんて素敵な名前だろう。 そう思ってひた歩く。 んん。 ここは日光江戸村か。 外国人がイメージする中国がここにあった。 どんぶりみたいなチャイナ帽を被ったおっさんが笑顔で写真撮影に応じてる。 目立ちたがり屋の銅鑼が何度も鳴り響く。 中国らしい土産物が整頓されて並んでる。 綺麗に舗装された道にはゴミ一つ落ちてない。 セレブリティ。 僕はそんな作り物の中国を覗きたい訳じゃなかった。 それでも僕はひた歩く。 セレブリティにひた歩く。 これじゃ足が棒になっちゃうよ。
それでもひた歩くと、屋台でタニシが売っていた。 どんぶりいっぱいのタニシ。 僕はセレブリティにタニシを食べる。 量は質素でよかった。 そういえば2007年の食べ収めはザリガニだった。 ボウルいっぱいのザリガニ。 そして2008年の食べ始めはタニシだった。 子タニシがうじゃうじゃついたタニシ。
翌日もひた歩いた。 西湖を逆周りでひた歩いた。 綺麗に刈り込まれた芝生に置かれたスピーカーからは雄大な音楽が流れてる。
「これは胡弓かな」
いい音楽ではあるが、過剰演出は客を引かせる。 それでも曲に合わせて僕はひた歩く。 これで足が棒になっちゃったよ。
帰りはセレブリティにバスに乗ることにした。
僕は綺麗な町での遊び方がまだいまいちよく分からない。 ショッピングってのがいつも肝だが、どうもそこに踏み出せない。 絵を買うよりも画用紙を買うことに喜びを覚える。 白紙に一本の線を描き足す。 今はそれが楽しい。
でも夕方になればまたこの町を好きになる。
夕陽を見てるといつも息を呑んでしまう。
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