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2007/08/28(火)
『序の二、2007夏、山の陣』
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月が赤かった。 東のあたり、赤い月が浮いていた。 稲光が綺麗だった。 北のあたり、積乱雲か、その内部で稲光が輝いていた。 空全体、満天の星も輝いていた。 夜目に慣れるとその数は増していった。
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僕たちは今日、富士山に登った。 かなり登りやすい山だった。 心配していた靴擦れや高山病も細かく入れた休憩や水分・酸素補給のお陰か、全く問題ない。 でも寒さだけは厳しい。 風が吹けば僕らは身をよじる。 僕たちは今、本八合目の宿の外で空を見上げているのだ。 今日はここで仮眠し、日付が変わる頃頂上へとまた登りだす。 御来光はちゃんと見れるだろうか。 今日は雲がやけに多い。
富士山は雲ばかりだった。 どこを見渡しても雲ばかり。 当然か。 富士山の周りにはなにもない。 だから登山好きな人はあまりここに登らないそうだ。 確かに。 他の山と違って、鬱蒼と生い茂った樹や苔や河がない。 あの山独特の秘密めいた空気がない。 あるのはやっぱり雲ばかりである。
至るところで雲が生まれてく。
ということで残念ながら、今回「皆既月食」をみることは出来なかった。 黄色い月が少しずつ赤く染まっていく、その様をみたかったのだが、今日は特に雲が多すぎた。
標高3360m、本八合目の宿「白雲荘」にて。 それでも僕たちは空を眺めていた。 かなり寒い。 早く布団に入って、明日の為に眠った方が得策だ。 でもこんな夜にやりたいことが僕にはあった。 温かいコーヒーを寒空の下で飲むのだ。 いや、コーヒーよりももっといい飲み物がここにはあるみたいだ。
『ココア二つ下さいな』
僕たちはまた寒空の下に出た。 おお。 両手の平があたたかい。 喉元やお腹があたたかい。 ココアからはたくさんの湯気が湧き上がっている。 その湯気がまたあたたかい。
『・・・・ふぅ』
これはなかなか幸せである。 月が見れなくても、なかなかに幸せである。 どうせだったら幸せついでに月も出ちゃえばいいのに。
『・・・・おぉ』
出ちゃってた。
月が赤かった。 東のあたり、赤い月が浮いていた。 稲光が綺麗だった。 北のあたり、積乱雲か、その内部で稲光が輝いていた。 空全体、満天の星も輝いていた。 夜目に慣れるとその数は増していった。
夜8時、布団に包まって明日を待つ。
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