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2007/08/26(日)
『御法度解除』
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熱帯夜もピークが過ぎ去ったんだろう。 ここ最近はやけに過ごしやすくなっている。 ここ最近は扇風機を「強」にしたまま眠りにつくと、翌朝寒気さえ感じるほどだ。 夏は徐々に、徐々に薄まってきている。
しかし、寝苦しい夜は続いている。 その原因は気温や湿度ではなく蟻だ。 夜な夜な蟻が僕の体を這っている。 奴らは深い眠りについたころを見計らって、ニジニジと這いにやってくる。
かつての僕はこの部屋に生類憐みの令を敷いていた。 蚊を除いてこの部屋を出入りする生き物は全て殺さずして逃がすべし、と。 だから最初の方は黙認していた。 畳の隙間を出入りする数十匹の蟻を温かい目で見守っていた。 数年前などは出掛ける前にチョコチップメロンパンをまるごと放り、わざわざ蟻を集めたりもしていた。 帰ってくると、チョコチップと蟻の区別がつかなくなったものだ。 それくらい温かい目で彼らを見守っていたのである。 でも、突如許せなくなった。 理由は簡単、彼らは僕の眠りを妨げてしまったから。
僕の睡眠欲は強い。 どうやら人より数倍強いようだ。 ときに眠りを邪魔するものは何人たりとも許せなくなってしまう時がある。 いや、許したいのに許せなくなり、ヒステリーに陥るときがある。 自制が利かなくなるんである。
その夜もそうだった。 何者かに眠りを妨げられると、僕は素早い身のこなしで電気をつけた。 僕は右腕に蟻を確認した。 僕は憤りや不快感を感じるでもなく、機械的にコロコロを畳一面にかけていた。 数本の髪の毛と一緒に小さな小さな蟻がこびりついている。
・・・・あ。 蟻。 すまん。
それから蟻の大群は減ってしまった。 彼らのネットワークはなかなかのもんである。
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