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2006/03/04(土) ひな祭りSS。家族部屋よりちょっと未来の話。
女のコらしいことが苦手だったから、3月3日はあんまり特別な日ではなかった、と彼女はけらけら笑う。
生まれたばかりの小さな生命は、年の離れた兄たちの優しい眼差しのおかげもあり、ベビーベッドの中にてぐっすりと夢の中。
その幼い命のために飾られた、雛人形。

アスランにとってひな祭りという言葉も、雛人形という言葉も、オーブに来てから知ったものだった。
カガリが小さい頃・・それこそ自分の意見を口にすることができないようなそんな幼い頃、父親と乳母が用意してくれた雛人形も、外でやんちゃに走りまわるようになってからは、カガリの拒否権により雛人形はお目見えすることはなかった・・・らしい。
だから、アスランが雛人形というものを間近で見るのは初めてのことだったのだ。

凝った作りの人形は伝統文化の香りを漂わせ、案外イザークあたりが喜びそうだと思った。



なんでも雛人形は、3日を過ぎたら早く片付けなければならないらしい。
嫁に行き遅れる、という迷信は、数百年前から受け継がれているらしく、
4日の今日、大きな雛人形を二人で片付けているところだ。


「出すのも大変だったけど、片付けるのも大変なものだな・・」


アスランが傷つけないようにとそっとお内裏様という人形を和紙に包みながら言った。
繊細な顔をした人形だから、手つきもなぜだか慎重になってしまう。
一方のカガリはアスランよりも素早く人形を片付けていった。


「でも早く片付けちゃわないと、嫁に行けなくなるだろ?」

それが自分ではなく娘のことを指しているのはすぐにわかった。
なんせすでに彼女は三人の子持ちのお母さんなのだから。
どう見ても、三人も子供がいるようには見えない若若しさは、いまだにアスランに「恋している」ためか。
それがアスランには嬉しかった。


「あ、でも・・・」

「でも?」


さっきまで順調に人形を片していたカガリの手がぴたりと止まって、何かを思い出したように呟く。
その声にアスランも動きを止め尋ね返した。



「片付けなくってもアスランに似て美人さんだから、将来は嫁にひっぱりだこだなぁ」


「・・・」



自分に似て、というカガリの言葉にひっかかるものの、
それ以上に娘が将来男たちに求婚される姿を思い浮かべて・・・
アスランは複雑な思いになる。
嫁の貰い手がないよりはずっといいが、こんなに可愛い娘を「はい、どうぞ」と嫁に出すのはとても寂しいし悔しい。
カガリは自分に似て、とは言ったものの、娘は間違いなくカガリ似だ。
将来は絶対、絶対カガリに似て愛らしく強く優しい子になることは間違いないと、アスランは確信している。
そんな可愛い娘が、他の男のもとに・・・?



「・・・困った」

「へ?」


アスランの呟きにカガリは彼の表情を覗うと・・・眉間に皺を寄せて険しい表情だ。


「嫁に行くのか・・・?」


そりゃそうだろ、とカガリは口からついそんな言葉を零しそうになったが・・・
あまりにもアスランが真剣に、言った言葉とおり「困った」顔をしていたから、ぱっと口を噤んだ。
当然の事かもしれないが、娘を可愛がってくれるアスランは父親として実に素晴らしい。
可愛がるだけじゃなく、ちゃんと面倒も世話もみてくれるし、本当に頼りになるのだ。
その分、我が子を大切に思う気持ちはわかるが・・・まだ1歳にもならない娘に対して本気で悩んでいるなんて・・・。
カガリにはそれが少し妬けてしまう。


「アスランの気持ち、ちょっとわかったな」

「俺の?」

「息子二人が生まれてきた時の気持ち」

「・・・?」


今でこそそんなことはなくなったものの、小さい頃はどこに行ってもてくてく後をくっついていた双子の息子達を溺愛していた自分を、アスランは時折寂しそうに見ていたものだ。
あの頃は常に、子供にヤキモチ妬くなよ、と口にしていたせいか、
今素直に「私は妬いてます」なんて言えるはずもなく、カガリの言った言葉を理解していないアスランがきょとんとしているのを見なかったことにして、人形を片付けていた手をまた動かし始めた。
それを見て、アスランも疑問は自分の中にしまい込み同じく片付けを再開する。



「・・・でも・・・まぁ」



手を動かしながら、カガリが口を開く。




「私がずっといるから寂しくないだろ?旦那様っ」




その声に、アスランの手から人形が滑り落ちた。


床に落ちきる前に掬い上げ、破損や傷がつくなどという最悪の事態を免れることができたことにほーっと安堵のため息をするも、先ほどの彼女の発言をすぐに思い出してぱっとカガリへ振り向く。


笑いを堪えたような彼女の顔に、アスランの顔は赤くなった。


「旦那様は照れやだなぁ」


「・・・カガリだって・・・」


ちょっと赤い、彼女の頬を指摘すればさらに深い赤に染まった気がした。
いい年してもたった1つの嬉しい言葉で舞いあがってしまう、恋する二人。



雛人形を片付ける手をもう1度止め・・・

子供達を少しだけ忘れた、ただの男と女の時間が流れて行く。






見つめあったまま近づいていく唇に・・・

起きた妹を抱きかかえ両親のもとへやってきた長男と次男は照れながらも微笑み合い、気付かれないように部屋を後にした。


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