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2005/10/08(土) 04:ガーディアン 守る
「君は俺が守る」

なんて陳腐な物言いなのだろうか。
そういう男が1番信じられないと、どこか風の噂で聞いたことがある。

「貴方は私が守ります」

それでもこんな言葉が口をつくのは、言葉のボキャブラリーが貧困なんだろうか。

親善大使としてプラントの地に立ったカガリのもとに最初に起きた出来事は、
歓迎の言葉でも小さな子供からの花束贈呈でも、ましてや国民の盛大な拍手の出迎えでもなかった。
いや、その予定はきっとあったのだろう。
カガリのもとに飛んできたのは、水の入った風船だった。
しかも狙い定めた相手であろうオーブ国代表首長には当たらず地面で弾けたというオチまでついて。
今時こんな馬鹿げた歓迎の仕方をする人間がいるとは・・・

・・・言うまでもなくただの愉快犯だ。生卵じゃないだけましだと思えばいいのか。

それでもこの大事な来客の身体に、擦り傷ひとつも不快感さえも与えるわけにはいかず、
混乱気味に大声を張り上げていたプラント政府の重鎮らしき男がさらに声を荒げる。

「誰だ!!すぐに捕まえろ!!」

物々しい雰囲気にカガリが眉を寄せる。
大声をあげた男のおかげか、水風船を投げた愉快犯はすぐに捕まえられた。


「代表、こちらへ避難を・・・」
「あ、あぁ・・」

一応、念のためにカガリの肩を抱いて避難を促す。
たいしたことではないとわかっているのに、周りの無駄に荒げた声にカガリもつられて混乱の表情を浮かべたのに気付いて、
俺は落ちつかせるように、今度はその小さな手をとる。
こういう時、優しい言葉をかけて彼女の心から不安を取り除くのも俺の仕事。

「大丈夫。貴方は・・・私が守ります」

その瞳をじっと見つめて伝えた言葉は、我ながら『決まった・・っ』と思った。思ったのだ。
けれど、彼女がどんな性格でどんな人かってことを、わかっていなくてはいけないのは自分だというのに、
何故だかこの時、すっかり頭の中から抜け落ちてしまっていた・・・


「――――っぷ!!」


俺の言葉になぜか噴出す彼女。
同時に俺の表情も崩れたことだろう。

「・・・・・・・・〜〜〜!あははははははは!!!」

笑い出した彼女は暫く止まらない。・・・ということを知ってる俺も悲しい。

「あははははははは!!!!」
「だ、代表・・・っ」
「・・・・っはははは〜!あははは!」

あまり笑わないでほしいと懇願するように声を出せば、余計ツボに入ったらしく
俺の願い虚しく笑い声は大きさを増すだけ。


かっこつけた台詞は、やはり彼女にはかっこつけただけであったらしく、
笑い声はこの場の雰囲気には似合わないほどに響き渡る。

「・・・はは!おっかし〜!・・・・まったく。水風船ごときで、私が怯えると思ってるのかっ?」

思ってません・・・・。すみません。

「大丈夫、おまえが怖かったんだよな?私は大丈夫だから・・・」
「いえ・・・その・・・」
「私が守ってやるからな!」

ばしんと背中を一発景気よく叩かれた。
ひりひりとした痛みで苦笑い。

非常に強気で勝気なオーブの代表は、実に豪快で頼もしい。
これほどの男前な誉め言葉を並べることができる女性も、世界中探したって彼女しかいないだろう。
そういう彼女に惚れてるのだ。

「私にまかせておけっ」
「は、はぁ・・・」

やっぱり彼女は頼もしい。


けれど・・・・
俺の幸せでもある護衛の仕事まで減らさないでください。


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