|
2009/10/15(木)
せめて最低限の優しさを(後半)
|
|
|
数時間後、用事を済ませて、家に帰ると、仔猫は居ませんでした。 「じゃあ、お家に入れてもらったんだ」と思いました。
だけど、洗濯物を取り込もうとしてベランダに出ると、近所の奥さん2人に仔猫がまとわりついて鳴いていました。 2人が仔猫を撫でながら、会話する声が、とぎれとぎれに聞こえてきました。
「可愛いわね・・・」
「人懐っこいし・・・」
「昨夜から・・・」
そのうちに、気になる一言が聞こえました。 「可哀そうだけど・・・」
だけど・・・だけど何?・・・と思って、1階に居るダンナ君のところに行って、 「仔猫がまた外に居て、近所の奥さんが撫でたりして話してるけど、なんとなく不味い雰囲気がする」 と話しました。
2人で外に出てみると、仔猫も奥さんたちも居ません。 胸騒ぎがしたので、奥さんたちが話していたところに行ってみると、数分後に一人の奥さんが、戻ってきました。
「仔猫は?」と聞くと、
「今、畑の方に置いてきたわよ」
(間に合わなかった?)
たぶん顔が変わったんじゃないかと思うくらい、一気に頭にきて、 「どこの畑ですか」と、私が言うと、
「あっちの方の畑。」
「あっちって、どこら辺ですか?」
「すぐそこよ。抱っこして、連れていったのよ〜。 そしたら偉いものだわね。畑に行ったら、ちゃんと自分でピョンって飛び降りて走って行ったわよ。 分かるのねえ。・・・小さくてもねえ。 すごく良い猫で、可愛くて、人慣れしてるから、飼いやすいわよ、きっと・・・」
それどころじゃありません。 近所でカラスが成猫を襲っているのを見た事が有るのです。 そのカラスが、さっき畑の方に飛んでいったのを見ました。
だらだら、言い訳も交えて、話し続ける奥さんに 「だから、どこの畑に置いてきたんですか?」と繰り返して尋ねても、答えません。
掴みかかってぶん殴っても仕方ないし、とにかく仔猫が先だ!と思って、指さす方に走りました。
もう、だんだんうす暗くなり始めているのに、見つけられなかったらと思うと、もう・・・
恥も外聞もなく、「にゃんにゃん」言って、呼びながら、けっこう広い果樹園や田んぼや畑の中を歩き回りました。 たぶん、怖がっているだろうから、走って近づくわけにはいかないので、 足音をたてないように、気をつけて、 でも、出来るだけ早歩きで、「大丈夫だから出ておいで」って祈る様な気持ちで探す間に、胃が痛くなってきました。
やがて、廃材を集めて積み上げている場所から、小さく答える声がしました。 近づいて、呼ぶと、姿が見えて、もう泣きそうでした。
すくいあげるように抱いて、後から追いかけてきたダンナ君に見せて、2人で家に向かうと、仔猫を捨てに行った奥さんが庭に水をまいていました。
仔猫を見せたくないからシャツの中に入れて、横を通ると、 「可愛い猫でしょう。人慣れしてるしね。良い猫だよね。良かったわね。・・・」だらだら話しかけてきました。
私は無言で(うるせえ〜くそ婆。命を何って思ってやがる。てめえも同じ目に会いやがれ!)と、返事もしないで睨みつけました。
家に着いたらすぐキャリーに入れて、獣医に行って、肺に穴があいているのを知らされました。 朝さっさと受け取らなかった自分にも、ものすごく腹が立ったけれど、 捨てに行った奥さんの行動と言い方にも怒り心頭、ものすご〜っく頭にきました。
拾ってくれなくても、飼ってくれなくても良いから、なんで放っておいてくれなかったの? 自分の家の周りで鳴かれるのが嫌だから、目の前から消えてくれさえすればよいからって、なぜ捕まえて人気が無いような場所に捨てに行ったりするの? なぜ、助けてくれなくても良いから、せめて放っておいてくれないんだろう? 撫でて抱っこして「可愛いわね」って言って、すりすりして甘えた声で鳴いている仔猫を、なぜ川まで連れて行ったの? 「小さいのに、ちゃんとわかってるのね。頭が良いのね。自分で飛び降りて畑に隠れた・・・」って、あんた何しようとしてたの?
ケージを組み立てて、温かい寝床を用意して、水を飲ませてご飯を食べさせて、仔猫が落ち着いてから、 久しぶりに、猫が居ない部屋で怒鳴りまくりました。
ダンナ君は黙って聞いていて、やがて、「川に捨てられなくて、良かったよ。」と言いました。 私は、「そしたら、飛び込んで探すけどさ。生きててくれて良かったよ。もし生きていなかったら、自分を許せないところだった。」と答えました。
怒りの半分は、自分に向けてのものでした。
私は虐待されて育ったけれど、その時に誰も助けてくれませんでした。 見捨てられる辛さは身にしみています。 だから幼いころに「自分の出来うる限り、助けを呼ぶ声に答える」と自分に約束しました。 でも今回は、その約束を破ってしまうところでした。 だから、夜中まで、自分と近所の人に対する怒りが治まらず、ほんとに大変でした。
|
|
|