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2006/05/10(水)
僕らは人を
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五年前、一人の男が恋に落ちました。 その恋は結局、自分が納得できない終わり方をしてしまい、その男はしばらく絶望感と葛藤を抱え込んでいました。
それからというもの、その男は男女を問わず人を好きになる事ができなくなりました。いえ、できなかったのではなく、しなかったのでしょう。自分がひどく傷つく事に耐えられなかったのかもしれません。人の悪いところばかりが見え、「傷つくぐらいなら寂しくても一人のほうがずっと楽だろう」と考えていたのです。 ところがその男はふとしたことから考え直しました。「このままでは生きていけない。人を好きになっていくことが、幸せの第一歩だろう」と。 そこから男は少しずつ努力し始めました。人のいいところを探し、なるべく多くの人と話すように努めたのです。今はうまくいかなくても、いずれ人を愛し、笑いながら生きていけるはずだと…。 そしてある日、男は一人の友人と久々の再会を果たしました。 ところがその友人は恋人関係で少し問題が起きていました。男はその友人の話を聞き、人を好きになっていくことの苦しみ、葛藤を知りました。その問題は男が思っていた以上に深刻なものだったのですが、男は友人にこう言ったのです。 「でも、人を好きになるというのはすばらしいですよ。私は今、人を好きになる事がとても難しいのです。少しずつ努力しているのですが、なかなかうまくいきませんよ。それに比べて、貴方は人を好きになり、人を信じ、また人と本気でぶつかっています。それほど素敵なことはないですよ」と。 そう、男は人を好きになっていける友人たちが羨ましかったのです。自分がどれだけ苦労してもできないことを、友人たちは容易くやってのける。自分に持っていないものを、友人達は持っている。 ――男はつぶれそうになりました。
それから数日、男は「人を好きになる事」について四六時中悩んでいました。男には真剣な話をできる友人も少なかったので、友人の話を色々な意味でとても重く受け止めていたのです。 そうしているうち、その友人とまた話をしたいと思い始めたのです。友達としてではなく、人間として。 男は数日後に友人と会う約束をしました。会って真剣に話をしたかったのです。会って自分と相手の思いをぶつけあいたかったのです。そしてもう一度話をしたその時、男は人を好きになっていけるかもしれないと思ったのです。
今、男は自分の思いを綴っています。 何一つ嘘のない、自分の思いを綴っています。 涙を流しそうになりながらも、現実と向きあおうとしています。 いつか人を好きになり、人を愛し、幸せに笑っていたいという思いを胸に――。
最後に、男がとても好きな曲の歌詞を、一部載せさせていただきます。
僕らは人を愛し始める 強く切なく傷つき 僕らは人を愛し始める 今日も明日も歌いながら 僕らは人を好きになってく 君も笑顔も涙も 僕らは人を好きになってく 今日を明日を歌いながら
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