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2018/04/14(土)
尻が腫れあがったあの日
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ザリガニもいくらでも釣れました。道具はザリガニを入れるバケツと1m ほどの短い竹にタコ糸です。近所の仲間と示し合わせて鼻歌街道をルンルン歩いて行きます。川の流れの緩やかな浅瀬には赤い爪を持ったあのザリガニがいます。バケツをそこの土手に置いてから田んぼを見回します。そしてカエルを見つけます。竹の根元にタコ糸と合わせてしっかり握るとカエルを見据えてピシッと打ちますとカエルは硬直します。最初はブルブル震えていますが、手足をピーンと伸ばして固まります。いわゆる死後硬直と言われる状態になります。そのカエルの足の指を折り、皮をむきます。スルっとむけるのですが、そのカエルの足をタコ糸に結わえてザリガニの近くに投げるとスルスルとザリガニが近寄ってきます。カエルを食べ始めると竿を引き上げます。こうしてザリガニはいくらでも吊り上げられます。バケツ一杯になったらもう一つのバケツを持った仲間と「故郷」などの唱歌を大声で歌いながら意気揚々と凱旋します。裏山の広場で石で築いた二つの竈の薪に火を点けバケツを載せます。グラグラと煮立ったらみんなで食べます。「おお熱いのお。旨いのお」これがまあなんともホントに旨いのです。ある日のことです。たまたま母がわたしたちを見つけました。「あんたらー何しよん?」「・・・・・」「ザリガニを食べよんかな!」「・・・・・」その剣幕にみんな驚いて黙っています。母はバケツをひっくり返して火を消し、ザリガニを食べられないようにしてからわたしたちに命令しました。「みんな帰んなさい!けんじ!来なさい!」とわたしの手を引っ掴み、家に連れて帰り、わたしの尻を叩き続けました。「ジストマにかかったらどうするんじゃ。あほー。ジストマにかかったらどうするんじゃ。あほー」と泣きながらわたしの尻を叩き続けました。わたしは(エビは炊いて食べたらあたらん言うたじゃねえか)と思いながら叩かれ続けていました。その夜わたしの尻は腫れあがり仰向けでは寝られず俯いたまま眠ることとなりました。懸命に泣くのをこらえながら。
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