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2018/12/27(木)
S女
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図書室に行くと「まあ、あるわ、あるわ」本がびっしりとある。まあ図書室なのだから当たり前ではあるが、本になじみのないわたしにとってはビックリポンの出来事であった。思えば、中学校時代は、朝は市場に仕入れに行く、昼は学校で居眠り、授業が終われば部活、帰ると夕飯を食べてから寝るという生活であった。高校1年生では朝の市場は無くなったが、映画とテレビが加わった。従って、読書の楽しみを知らない生活をしていたわけだ。そうした理由からわたしは本とは無縁の生活から本がいっぱいの空間の中に投げ込まれたという訳であるが、ここで新しい出会いがあった。これまたビックリポンであった。それは1年生の図書委員S女との出会いであった。少し日に焼けた感じの彼女は中学校の柔道部で先輩が言っていた操山高校の女性(事実はそんなはずはないのではあるが)だと思った。しかし、彼女に「好きだ」とか、「一緒にお茶を飲もう」とか声をかけることさえ一度もなかったが、しかしこの出会いで思ったことは、「よし、本を読んでみよう」「よ〜〜し、少しは真面目に勉強してみよう」ということであった。まず何を読むか!?図書室を探しまわって見つけたのはスタンダールの「赤と黒」であった。赤は兵隊であり、黒は僧侶であるが、兵士か僧侶かの道は当時のフランスの若い男性が出世を夢見る時に迫られる二つの選択の道でった。主人公、ジュリアン(であったか?)は女性と関係を持つことから栄達を遂げながら最後は挫折するというストーリーであった。これは現代でも通用するストーリーである。それからわたしは清輝橋の古本屋によく立ち入るようになった。乏しい小遣いから新しい本を買うという余裕はなかったのであった。まず母が好きであった石川啄木の歌集を買った。 はたらけど はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり ぢっと手を見る 母はよくこの歌を口にしていた。自分の荒れた手を見ながら同じ思いを共感していたのであろう。 この古本屋で見つけた本がまた意外な本であった。
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