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2016/12/11(日)
熟柿考
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熟柿落つ吉備路の寺のさびしさよ けんじ 柿は日本で最も発達した果樹である。もちろん中国や朝鮮にもあった。渋柿がもともとの柿であり、渋を抜き甘くして干し柿として食用された。今日まで続く美味しい食べ物である。この渋柿を鎌倉時代から甘柿にしようと品種改良が重ねられてきた。この美しい朱い紅色の実(赤き実からかきとなったとする説あり)は日本の秋を代表する色彩(いろどり)でもある。この色彩と美味しさが19世紀に日本から南フランス、米国カリフォルニア、ブラジルなどに伝わり、果樹園栽培がおこなわれているという。和食の世界への広がりと同様にうれしい気持ちにさせられる事実である。柿渋や柿酢も楽しくうれしい加工品である。わたしは柿渋染が大好きである。だが後記の如き風景が失われてゆく日本をさびしくも思う。 柿うるる夜は夜もすがら水車 三好達治
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