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2015/11/18(水)
ジャン・フロワサール
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文字の力を代表する人物の一人としてジャン・フロワサールという人がいる。彼は14世紀の聖職者であり、イングランド王エドワード3世の王妃フィリッパに仕えていた。当時の文人の職業は宮中に限られていた。日本では女性が健筆を披露しているが、紫式部や清少納言もその代表者の一人であろう。フロワサールの仕事は君主の気高いおこないを誉め、宮廷の恋を歌い上げることがその主な仕事だった。しかし、彼はその仕事の傍ら当時のヨーロッパに吹き荒れていた百年戦争に興味を示した。こうした彼の百年戦争の歴史に示す熱意に対し、女王は彼を百年戦争の歴史編纂の職につかせ、その仕事をまかせたという。彼は各地を転々としたが、英国の領土へも何度も赴き、ポワチエの戦いで捕虜となったフランスの騎士のもとを訪ねたという。こうした血のにじむような努力の結果、彼は「フランス、イングランド、スコットランド、スペイン、ブルターニュ、フランドル、および周辺諸国の年代記」全4巻を1400年に完結した。14世紀を通覧するこの著作の大部分は百年戦争の叙述に当てられ、彼は歴史のひとこまひとこまにどんな細部も見逃さずその書簡を述べているが、この書は百年戦争の重要な歴史書であるとともに14世紀の騎士道文化を記した傑作だといわれている。わが国においても日本の明治以来の歴史のひとこまひとこまを天皇制の功罪も含めて検証する一大事業が今必要とされているのではないだろうか。文字と映像の力で後世に正しい歴史を検証する歴史書としてまた未来を切り開く導きの力として。
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