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2015/10/07(水)
羨望と尊敬
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日経新聞(10.5)の文化欄に土田悠平さんの「私は見たり 111曲の野ばら」という記事を見つけてうれしくなった。そして尊敬の念を覚えた。 童は見たり 野中の薔薇 この歌いだし、ご存知の方も多いだろ う。ドイツの文豪ゲーテの詩、近藤朔風の翻訳による「野ばら」の歌詞だ。シューベルトやウェルナーの歌曲が特に有名で、歌える人も少なくないと思う。ところがこうした知られている歌はほんの一部。ゲーテの「野ばら」の詩による歌曲は文献上、154曲も存在するのだ。 まずこの書き出しに驚いた。そして自分の浅学に恥じ入った。しかし、彼のすごいところはこれからだ。芸大卒業後、就職していた小学校教員を1年で辞し、ベルリンへ。その折、たまたまウイーンで野ばら91曲集に出会い、欧州で「野ばら発掘の旅」に出かけたというのだ。図書館に通ってブックカードを1枚づつめくって有無を確認したり、遺族を訪ねてコピーの許可をいただいたりとトルコやアルメニアまで足を延ばしたという。こうして彼は現在111曲を発見し、11月27,28日に埼玉県で「野ばら111曲演奏会」を開くというのだ。この集中力には恐れ入る次第である。ノーベル賞受賞者をはじめ、一事を為した人は集中力がすごい。なんでも手をだすが、一事を成しえないわたしは羨望するばかりである。そして彼らに尊敬の念を覚えるのである。
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