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2010/12/03(金)
グノー派?シューベルト派?
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川畠成道さんのヴァイオリンリサイタルへ行って来ました。
毎年ですね、川畠さんの演奏会は毎年行っています。 いつぞやmixiで彼の事を書いた日記もありますし、此処でも書いたかな?彼は幼い頃、薬害で視力を失ってしまいました。盲目になってから弾き始めたヴァイオリンは、過去の彼と今の彼とこれからの彼を支え、彼と私達とを繋げてくれる、大切なツールです。
彼の音は清麗そのものです。 演奏スタイルに大袈裟な演出はありません、自分を大きく見せる事も、感情の知ったかぶりもありません。 なんていうか……悟り?うん、悟りすら感じる清々しい演奏。なんであんなに澄みきった、清らかな音が出せるのか。
今回は、ツアータイトルが「10年目のアヴェ・マリア」という、彼がLAでデビューしたアヴェ・マリアから10年が経ち、今一度初心に返り、また、この10年間自分を支援してくれた沢山の方々へ感謝を捧げたいという思いで組まれた、特別プログラムでした。
彼の弾くグノーのアヴェ・マリアは、「成道のアヴェ・マリア」と呼ばれており、幼い子供の声で「マリア?そこにいるの?」と語りかけてくる演奏です。 視力を失って暗闇の中、懸命に手を伸ばしながらマリアを呼びます。でもそこに悲劇的な感情はありません。子供がお母さんを呼ぶ時に「ねぇ、いる?そこにいる?」と繰り返し尋ねる、あの可愛らしく純粋な確認の声。 「いるよ、ここにいる」と微笑みながら手を広げたマリアが、彼を大きな愛で包みます。全ての子供達と、幼かった彼と、そして今も彼を優しく抱き締めるような演奏は、我々の涙腺をぐいぐい押してきます。
一方、彼の弾くシューベルトのアヴェ・マリアは、男声と女声が交代で祈りを捧げるアヴェ・マリアです。 グノーのアヴェ・マリアが子供の声とするならば、シューベルトのアヴェ・マリアは大人の声。私は親の祈りの声だと解釈しています。最初は低音で父親が、次に美しい高音で母親が。
……もうね、どちらのアヴェ・マリアもね、「美しい」という形容が相応しいのさね。綺麗な音とかそういう事でなくて、いや勿論綺麗な音だけれども、そういう事だけじゃない、「美しさ」があるんだ。 祈りに宗教臭が一切ない。彼のアヴェ・マリアはただただ、幸福を願うアヴェ・マリアなんだ。
アヴェ・マリア以外の演奏だと、彼の清麗さを抜群に生かしたメンデルスゾーン「歌の翼に」がオススメです。 清らかで伸びやかで、彼のこれを聴く度に感心せずにはいられません。
そうそう、私の大好きなパガニーニの「ラ・カンパネラ」を短く編曲して演奏してくれたのだけれど、正直ピアノ伴奏がイマイチなアレンジでしたwwwwwwって凄い上からな意見で申し訳ないがあのアレンジじゃ駄目だwwwwwww
アンコールは4曲、お馴染みとなったチャルダッシュやひばり等、技巧的な曲を披露した後、最後に彼が持ってきたのがバッハのアリアでした。 今年、彼の身近な方が亡くなられて、その人に捧げますと弾いたアリアは、哀しみを打ち出すよりも透明な、よく晴れた冬の朝の、雪面に陽があたって結晶がキラキラするような、静かで優しいアリアでした。
川畠成道ジャパンツアー2010-2011 「10年目のアヴェ・マリア」
〜プログラム〜
ベートーベン◆ヴァイオリンソナタ第8番ト長調 メンデルスゾーン◆歌の翼に ヴィエニアフスキ◆創作主題による変奏曲 グノー◆アヴェ・マリア ブラームス◆ハンガリー舞曲第1番 シューベルト◆アヴェ・マリア パガニーニ◆ラ・カンパネラ ピアソラ◆タンティ・アンニ・プリマ(アヴェ・マリア) サン=サーンス◆序奏とロンド・カプリチョーソ ピアソラ◆オブリビオン モンティ◆チャルダッシュ ディニーク◆ひばり バッハ◆G線上のアリア
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