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2009/03/09(月)
ディートリッヒとケンプファー★129
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「ちょっとイザーク、僕の携帯勝手にデコったの君?」 「おや人形使い……何のことかね」 「とぼけないでよ。こんな嫌がらせするのは君以外にいないよ」 「失敬な。可愛いじゃないか、ピンクのキラキラに囲まれたクマちゃんだよ」 「やっぱ君じゃん」 「邪魔をするなら出て行ってくれたまえ。私は今忙しいんだから」 「机に向かってノートなんか広げちゃって気持ちワル。何をしてんのさ」 「気持ち悪いは余計だが、単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相と言えるかの証明をね……数学者を百年悩ましている難問を、この私がちょちょいと解いて差し上げようかと思ってね」 「……いやそれポアンカレ予想だろ。ついこないだ証明されたじゃん」 「いつの間に」 「NHKスペシャル観なかったの?サーストンの幾何化予想が証明されたから、必然的にポアンカレ予想も証明されたんだよ」 「……私が万有引力を発見したあの頃が懐かしいよ」 「誰?誰が発見したって?」 「証明内容を教えてくれないか、人形使い」 「やだよ、面倒くさい。それに僕の専門は数学じゃないんだから解んないよ」 「人形使い、数学はロマンだよ。優しい私が優しく教えてあげようか」 「いらない」 「例えば、君が一本の長い綱を持って宇宙を一周したとしよう。綱の端っこは其処の椅子にでも結んで、もう一方の端をもってこの窓から宇宙へGOだ」 「いらないって言ってんのに」 「そして綱を握ったまま宇宙を一周した君が無事に帰って来て、椅子に結んだ端と君が握っている端、つまり綱の両端を引っ張り、此処から綱を回収したとする。スムーズに全部引けて回収出来たら宇宙の形は概ね丸いという事だ。綱が何処かに引っ掛かって回収出来なかったとしたら、宇宙というのはドーナツみたいに穴が開いてるんじゃないかな……これがポアンカレ予想だよ」 「全然わかんない」 「困った子だね……ではこうしよう、君が其処のベッドへ仰向けに寝て、私が君の身体を一筆書きの要領でもって指でなぞる」 「………………は?」 「右足の小指を出発した私の指は、脛、腿、脇腹、乳首を掠めて、腕、肩、耳、口唇で一休み、左半身も同様に下降してきて腕、脇腹から脚、左足の小指から親指へ、脛と腿を駆け上がりいよいよあの部分を丹念になぞったら別れを惜しみつつ右脚太腿へと移動し、脛を下りて右足親指、やがてまた右足小指へと戻る。これで一周だ。指でなぞった部分に糸があると仮定して、その糸を引っ張るわけだよ。さあ、糸はスムーズに回収出来るかな?」 「させないけどね、そんな事」
糸冬 了
お分かり頂けましたでしょうか、ポアンカレ予想wwwwwwwwwwww
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