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2006/02/13(月)
それぞれのバレンタイン〜エステル編B〜
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夕刻間近、エステルは独り、剣の館からテヴェレ川を眺めていた。今日一日職務に身が入らず、時間を見つけてはこうして大きな窓前に立って遠くを眺めて過ごした。 「あれ?エステルさん?」 声の主は振り返らずとも解る、アベルだ。何やら大きな袋を引き摺りながら近づいてくる…かなり大漁らしい。 「モテる男も辛いな〜嗚呼、なんと罪深いワタシ!」 「全然辛そうじゃないんですけど…アラ、この不気味な黒い包みは何ですの?」 「どなたかが贈って下さったみたいですねぇ…後で中身確認しときます、愛の言葉を囁いたカードが添えてあるかも知れませんしね、ぐふふ」 「…そうですわね」 「カードと云えば、いえね、晩御飯まで我慢出来なくってさっき1個だけ食べちゃったんですけど、差出人の名前がなかったんですよ」 「まぁ…余程慌ててたのかしら」 「ねぇ。カードにはなんだかジョン・レノンの似顔絵付きでね、何でしょうね」
あ た し の だ。
「アレ?どうしました?」 「…いえ…それより、そんなに食べてお腹壊さないで下さいよ?」 「あ、私はさっきの1コ頂いちゃいましたから、コレは皆さんにお裾分けしてきます。あー忙しい」 アベルはそう云って袋を肩に担ぎ直すと、廊下の来た道を引き返した。 「イヤ、アレは美味しかったなぁ、うん」 …随分大きな独り言を呟いた銀髪の神父の背中を見送ったエステルは、青金色の瞳を数回しばたたかせ、火照る頬を夕陽の所為にしながら、口唇に笑みを乗せた。 「ありがと…神父様」
糸冬 了。
皆様の明日もハッピーでラッキーな1日でありますよう。 番外編『それぞれのバレンタイン〜騎士団編〜』は、明日配信のメルマガにてwww
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