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2005/10/30(日)
教授とユーグ@
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「マスター、お風呂掃除終わりました…マスター?」
返事がないのを不信に思ったユーグが室内に足を踏み入れた時、窓際に微かだが何かの気配を感じて、美貌の剣士は一歩後ずさり、次の瞬間には割烹着の背中にある鉄棒を抜いていた。 澄んだ金属音と共に現れた白い光芒が、憂いを湛えた翡翠色の瞳を映した。たなびく筈の金髪は、家事の邪魔になるので無造作に括られてはいたが。 彼の手の中で優美な弧を描いた白刃は、ニトリで買った不燃性遮光カーテンを音も無く切り裂いた。陰から現れたのは、漆黒のマントに身を包む─ヴァンパイアではないか!
「ハロウィン!ハロウィンだから、ユーグ君!」
「…マスター?」
「早くその物騒なモノしまって!君ねぇ、なんでもかんでも斬ればいいってモンじゃあないよ?ちょっと驚かしてやろうと思っただけなのにもー」 「マスター」 「何だね?」 「お風呂掃除終わりました」
糸冬 了。
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