|
2005/02/27(日)
Dream On, Silly Dreamer
|
|
|
今、「ホーム・オン・ザ・レンジ」とならんで、日本でぜひ上映してほしいと思っている作品がある。 “Dream On Silly Dreamer”という、40分のドキュメンタリー映画だ。
*公式サイト http://www.dreamonsillydreamer.com/
トップページの、号泣するアニメーターのイラストを見ればそれだけでぴんとくるかもしれないが、 これ、Walt Disney Feature Animation(WDFA)の縮小に伴い解雇されたアニメーターたちが、 ディズニーアニメーション衰退の現場の様子を自ら綴った作品だそうだ。
と聞くと、解雇された人々の恨み節みたいな印象を持ってしまうけど、どうもそうではないらしく、 抑制が効いてバランスのとれた、上質のドキュメンタリーに仕上がっているとのこと。 Jim Hill Media、Mouse Planet、Jim on Filmなど海外サイトの記事によると、観た人の間では相当評判が良い様子。
2002年あたりからの大量解雇、フロリダスタジオの閉鎖、手描きアニメーションの(ひとまずの)終焉。 ここ数年のディズニーアニメーションをめぐる話題は専ら、こうしたWDFAの衰退についてだったが、 私個人は、意識的にあまりこのトピックを追ってはこなかった。
ひとつには、考えるだけでどうにも気が滅入ってしまうから、という気持ちの弱さもあったんだけど。 この手の情報のソースになっているメディアの姿勢に、違和感を覚えることが多かったから、というのもある。
日本の芸能メディアなどでとりあげられる場合なんかに特に強く感じる、冷笑的な姿勢。 ディズニーという時代遅れの帝国が崩壊していくさまをおもしろがってウォッチしているかのような。 これがどうにも我慢ならないのだ。
それに、手描きアニメーションをやめる=ディズニーおしまい、というよく見かける図式。これ違うよね? 現在、WDFAに手描きのプロジェクトがないのは事実だが、アニメーションを作るのをやめたわけじゃない。 多くのクリエーターがWDFAを去ったのも事実だが、戻ってこないとは限らないし、まだまだ才能ある人々も存在してる。 実際、今年はマーク・ディンダルの「チキン・リトル」、来年はクリス・サンダースの「アメリカン・ドッグ」という、 個人的にも期待の高い3Dの新作が待っているわけで。
手描きアニメーションを今後一切作らないという方針には私も反対したいけど、 ディズニーだからといって2Dだけにしがみついてる必要はないとも思うんだよね。 2Dか3Dか。どちらが絶対的なんてことはない、表現手段のバリエーションなわけであって、 問題は、それが各作品に相応しい選択であるかどうか、なんだと思う。
それから、すべての悪の根源はマイケル・アイズナー、というような極端な論調にも疑問が。 確かに、ここ数年のディズニーの混迷には、トップのアイズナーの責任が大きいことは間違いない。 だけど、ひとりの人間がディズニーを去ればすべて解決するのか? ロイ・ディズニーらが戻ってきたら、再び手描きアニメーションの黄金期が訪れるのか? そんな簡単な問題じゃないと思う。
思い返せば、ディズニークラシックスのルネッサンスを実現したのも、 個人的に大好きな多くの作品が生まれたのも、アイズナー体制の下だったわけだし。 WDFAの縮小が始まった時点でディズニーにいたロイに責任はなかったの?という気もするし。 だから、ロイたちがひたすらアイズナー叩きを展開してるSaveDisney.comには、どうも賛同しかねたり。
まあこういった、経営陣の政治的駆け引きのようなあれこれは、 企業としてのディズニーに興味があればおもしろいのかもしれないな。 そもそもビジネス的な視点のない私のような映画ファンには、興味が持てないところなのかも。
ただ、現場のアニメーターたちのこととなれば、話は別だ。 こうした話題で一番気にかかり、心が痛むのは、解雇された人たちに話が及ぶ時。 だって、私たちがWDFAから生まれた数々のアニメーションを楽しみ、 夢を見ることができるのはこの人たちひとりひとりのおかげなのに、 彼らの夢が破れ、素晴らしい仕事が報われないなんて。考えただけでやりきれない。
そういう意味で、“Dream On Silly Dreamer”というドキュメンタリーには、非常に興味があるのだ。
WDFAの衰退…なぜ、それは起こったのか。どのように、起こったのか。 野次馬的な話題としてではなく、経営論的な立場からでもなく、 現場にいたクリエーターたちの声でこの疑問に答えてくれる作品。 ディズニーアニメーションのファンのひとりとして、ぜひ観たいものだと思う。
しかし、これを日本で公開するのは「ホーム・オン・ザ・レンジ」どころじゃない難しさだろうな。 なにしろ、アメリカでも配給元が見つからず、単発的な特別上映でしか観られないという現状だそうなので。 せめてDVD化されて、日本でも入手できるようになればありがたいんだけど。
どうせなら、「ホーム・オン・ザ・レンジ」と同時上映なんてことが実現すれば ものすごく意義深いものになると思うけど、それは天地がひっくり返っても無理…。
|
|
|