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2004/08/27(金) 「エルサレムへの道」 by ローリー・キング
ローリー・キングのメアリ・ラッセルシリーズ新刊「エルサレムへの道」を読み終えた。
相変わらず長くて時間がかかる。そして、相変わらず読み応えがある。

ローリー・キングという作家は、自分の作品をジャンルでとらえず「小説」と読んでいるが、
一般的にはミステリー小説、なのだろう。
ミステリー嫌いの私がなぜこんな本を読んでいるかというと、
きっかけは例によってディズニー絡み。(まあ私の興味関心なんてほとんどそんなものだ。)

以前、グレートマウスファンサイトの方のネタにするために
シャーロック・ホームズの贋作・パロディ小説にいくつか手を出したことがあったのだが、
(グレートマウス[オリビアちゃんの大冒険]もある意味ホームズパロディの一種なので。)
その時に出会ったのがこのメアリ・ラッセルシリーズ、
またの名を“シャーロック・ホームズの愛弟子”シリーズだったのだ。

邦題には副題としてこの微妙にイタイ感じのシリーズ名が毎作ご丁寧についているので、
書店のレジに持っていくのもなんとなく恥ずかしかったりするのだが(笑)
内容も、簡単に書いてしまうとかなり恥ずかしい。

事故で家族を失った孤独な少女メアリ・ラッセルが、引退後のホームズに出会い、
類まれな知性を見込まれて探偵学を教授され、パートナーとなり、共に事件を解決していく…

という、説明してる方がばかばかしくなってくるようなどうしようもない設定。
が。しかし。侮るなかれ。おもしろいのよ、これが。

何しろ、主人公のラッセルは、20世紀初頭を生きるフェミニストで、ユダヤ人で、神学研究生。
だから、毎回出てくるテーマも、聖書に隠された神の女性性だとか、
マグダラのマリアはキリストの使徒だった!?とか…うれしいほど知的好奇心を刺激してくるのだ。
作者自身が神学で修士号をとってるだけあって、このへんの深さは半端じゃない。

さらに、人物描写、うますぎ。主人公が魅力的なのはもちろん、
出てくるキャラがみんな一癖あってリアルで、自分の目の前にいるかのような錯覚にとらわれる。
特に年配の人物が印象的なのは、作者自身が30歳も年上の神学教授と結婚しているせいかも。

シリーズ5作目にあたる今作品には、それに加えて、一種の旅行記のような趣もある。
英国政府からの秘密任務のため、英国統治下のパレスチナに潜入したラッセルたち。
砂漠の風景やベドウィンの放浪生活がここまでかというディテールまで書き込まれ、圧倒的な臨場感で迫ってくる。

今、こういう世界情勢の時にあえて中東を舞台にした小説を書くということ。
そこに興味をそそられたのだが、解説を読むと、実際にこの作品が書かれたのは1994年だったそうだ。
それでも、英国に占領されて間もないパレスチナと、今のイラクの状況はかなり被るところがあって、言葉を失ってしまう。

物語はユダヤ人のラッセルの視点で語られるが、だからといって他の信仰を否定するような描写は全くないし、
小説の中に宗教的な偏りとか、押しつけがましさは一切感じられない。
もっとメッセージ性の強い作品になるのかと思っていたが、意外なほど淡々とした感じだった。
が、あえて押さえたトーンでリアルさにこだわった文章が、かえって心に響く。そして、考えさせられる。
ローリー・キング、やはりすごい作家だ。

と、こう書くと設定のあほあほ感と裏腹にめちゃめちゃ硬派な文学みたいだが、
実際そんな不思議なアンバランスの小説なのだ。
今回も、深く考えさせられると同時に、げらげら笑っちゃうようなセリフ、にやっとさせられる爽快な展開、
思わずツッコミを入れてしまう場面がもりだくさんだった。

真摯な部分ととあほあほな部分。それがこのシリーズの持ち味なのかもしれないが、
正直、そのギャップについていけなくなって居心地の悪い感じがする時もある。

そもそも、どうしてこのシリーズをミステリー仕立てにしたのかは、未だに納得がいかないんだけど。
歴史や宗教の壮大なミステリーの前では、ありがちな殺人事件なんかが安っぽく見えてしょうがなくて。
(今回も、事件部分の黒幕は途中で見当がついちゃったし。)

それでもって、どうしてそこにホームズを引っ張り出してきたのかも未だによくわからず。
このシリーズ、いわゆるシャーロッキアン諸氏にはかなり評判が悪いようだが、それも仕方ない気がする。
だってこのじいさん、別にホームズじゃなくたっていいじゃん?
ていうか、このじいさんの存在、もはや要らなくない??
今回のお荷物っぷりには思わず「あんたシャン隊長か!?」とつっこんじゃったよ(笑)
(鍛えた部下に実戦で助けられ…TT)

そんなこんなで、このシリーズが好きなのか嫌いなのか自分でもよくわからなくなる時があるのだが、
はまっていることには間違いないようだ。早くも次作が読みたくてたまらない。
原書の方はもう7作目まで出版されていて、現在8作目を執筆中だそうなのだが、
日本語でもこんなに時間がかかる&専門用語多そうな話を原語で読む気はせず…。
翻訳も本当に大変な仕事になるのだと思うけど、楽しみにしているので早く出してほしいな。


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