|
2004/07/10(土)
Brother Bear: A Transformation Tale
|
|
|
PCがないために空いた時間を利用して、買ってから今まで開いていなかった本を読むことにした。
タイトルの通り、「ブラザーベア」のメイキング本。筆者はH. Clark Wakabayashi。 Jim Hill Mediaで絶賛されていた本なのだが、なるほど、読み応えのある一冊だった。
内容は、「ブラザーベア」という作品が最終的に出来上がるまでの紆余曲折。 同じWakabayashiの手によるメイキング本なら「リロ&スティッチ」の方がアプローチがおもしろかったと思うが、 この映画の場合は、製作過程でのTransformationをストレートに説明することが 作品に迫る最良の手段だったのかもしれない。
クマキャストの「リア王」になるはずの作品が、父子の絆を描く物語へと変化し、最後には青年と子グマの物語に落ち着く。 その過程は、確かにとても興味深かった。 (ストーリーに行き詰った時、子役キャラ頼みでコーダが生まれたというあたりは、 グレートマウスにおけるオリビアちゃん誕生過程とよく似ていて笑えた。)
が、個人的に、この本を読んで最もはっきりわかったのは、 少し皮肉なことだけれど、私がこの映画を大好きにはなれない理由だった。
「ブラザーベア」のストーリーは、とても好きだ。 それに、フロリダスタジオ最後の作品という意味でも、この作品を大好きになりたかった。 でも、現実には、それほどはまることができなかった。 (日本じゃ意外と評判良かったのも、知ってるけどm(_ _)m)
その原因は、この映画が“はじめにストーリーありき”じゃなかったせいだったのだ。 監督たちが最初にやりたかったのは、「リアルなクマを描きたい」「大自然を描きたい」、どうやらそれだけだったらしい(笑) それだけで始まった映画だったなんて…!
もちろん、その動機が間違っているとかいうことではないけど。 ただ、常にストーリー重視(偏重)の傾向のある私とは、価値観の違う作品だったということだ。
その点、「リロ&スティッチ」の監督コンビがストーリー部門出身で、自分たちでストーリーボードを手がけられたのと対照的に、 「ブラザーベア」の監督はひとりはアニメーター、ひとりはレイアウト出身というのも、うなずけた。
ストーリー作りの知識を持たない監督たちが、自分たちの描くクマに相応しい物語を作り上げるため、苦労に苦労を重ねる。 あの、よくできたストーリーは、そんな努力の結晶だったわけだ。 だからこそ、物語はいいのに、それだけでいっぱいいっぱい、 映画全体としての力がちょっと…という印象を受けてしまったような気がする。
例えば、キャラクターの個性がどうも型通りに思えて親近感がわかなかったのも、 主人公キナイの性格づけができたのがストーリー作りの最終段階になってからだったと聞いたら、 そりゃあ仕方ないよな、という感じ。
逆にいえば、そんな難航プロジェクトが最後まで許されて、立派な作品になって世に送り出されたことは、 今となっては奇跡みたいに思えるけどね。 利益に直結させようとして簡単に見切っていては、良い作品の可能性だって生まれない。 ディズニーは、そのことをよく理解している会社だったのだ。この時点までは。
ともあれ、「ブラザーベア」日本版DVDもいよいよ来月発売。 その頃には、また観直して、ちゃんとしたレビューを書く予定。
|
|
|