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2004/06/03(木)
廉価ピクサー
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ピクサーDVDが今だけセール1800円で発売中。 ってことでこの機会に、ビデオしか持っていなかった「トイストーリー」1、2を購入した。
いやあ、しかし安いよね。 ディズニー作品だったら、どんなにくだらないDirect-to-video作品でも2800円止まりなのに。 さらに「ニモ」を買えば一枚ただになっちゃうとか(私は買わないので関係ないけど)。もうどんなセールだよ、て感じ。
安く買えることはうれしいのだ。もちろん。 ピクサー作品なら、薄利多売で儲かるというのも理解できる。 だけど…この時期にやられると、これピクサーへの当てつけかい?という気にもなってしまう(^^;
ピクサーとディズニーのごたごたについては、最近じゃ交渉再開か?なんていう噂もあるし、 いまさら蒸し返すことでもないとは思う。 が、あの時期ちょうどネット休み中だった私は、自分の思うところをぶちまける場がなくてイライラさせられていたのだ。 (自業自得であることはわかってるんだけど…^^;)
というわけで、いまさらながら、あの騒動について思ったことを少し書いてしまうことにする。
結論から言えば、ピクサーがディズニーとの契約を更新しないと決めた時はうれしかった。 理由を説明し出すと長くなるのでそれはまた別の機会に譲るが、 ピクサーはディズニーとは別の方向でやった方がいいのに、と前々から思っていたので。
けれど、そこに至るまでのどろどろは、限られた報道から耳にしただけでもうんざりするようなものだった。
個人的に何より嫌だったのは、ピクサーのCEO(&アップルコンピュータ会長)スティーブ・ジョブズの発言だ。 問題の発言は、2月4日、ピクサーの四半期会議の問答で飛び出した。
(以下、引用部分はJim Hill Mediaより)
アン・マザー(ピクサー前CFO): Will Pixar's future films suffer without Disney's creative collaboration? (これからのピクサー作品は、ディズニーとのクリエイティブな協力なしで大丈夫?)
ジョブズ: The truth is there has been little creative collaboration with Disney for years.[中略] You can compare the creative quality of Pixar's last three films - for example - with the creative quality of Disney's last three films.
ほぉ〜。「ピクサーとディズニーの最近の3作のクリエイティブ・クオリティを比較してご覧なさい」とな。 じゃ、比較してみていいですか?本当に?いいんですね??
では… ワタシ流比較でいきますよ。
「リロ」>「トレプラ」>「モンスター」>「トイ2」>「ベア」>>>「ニモ」
で?ジョブズさんは何を言いたかったの???
…別に私は、こんなことをして「ニモ良くない!」とか主張したいわけじゃない (なんであんなに絶賛されてんのか教えてほしい気はするけど)。 “クリエイティブ・クオリティ”などという漠然とした項目で作品を比較することが無意味だと言いたいのだ。
例えば、興行成績を比較してご覧なさい、というのならわかる。 それから、クオリティというんでも、例えば「リロ&スティッチ」と「スティッチ!ザムービー」の 作画のクオリティを比べなさい、というのならわかる。
問題は、方向性も表現手段もまるで違う作品を、曖昧な“いい・悪い”で序列化しようとしたことにある。 何がクリエイティブかなんて、何が質が高いかなんて、 そんなのは個人の好みがつきまとう判断であって、一般論化できることじゃないのだ。
それを、誰もがピクサー3作品の方が質が高いと答えるに決まってる、と言わんばかりの問いかけにするなんて。 大手メディア最高責任者の発言としては、あまりにも傲慢で大人げなかったと思う。
さらに、ジョブズのトンデモ発言は続いた。
(今後のピクサー作品、ディズニーのマーケティング力なしで大丈夫?というマザーの質疑に対して) ジョブズ: But no amount of marketing will turn a dud into a hit. Not even Disney's marketing and brand could turn Disney's last two films - "Treasure Planet" and "Brother Bear" -into successes. (いくら宣伝しても元々ダメなものはヒットしない。 ディズニーのマーケティング力やブランド力があっても「トレジャープラネット」や「ブラザーベア」は成功しなかったじゃないか。)
おいおいおい。お待ちあれ、である。
せめて「トレプラ」と「ニモ」の宣伝の度合いを考慮してから言うべきじゃないのか? 「トレプラ」が興行的に失敗した背景には、ろくな宣伝をしてもらえなかったこと、 ディズニーの会長自らが公開前に“失敗作”とレッテルを貼ったことが全然影響してないとでも??
今までジョブズは偉大な人だと思っていたのに、幻滅しまくりだった。
これには後日談として、アニー賞授賞式で「ニモ」の監督たちが「ブラザーベア」の監督たちに ジョブズ発言について謝りに行ったという痛々しいエピソードもある。
結局、傲慢な経営者の陰で苦労するのは現場のクリエーターたちなんだよね…。 最近のディズニーをめぐるすべての騒動に、それを感じてため息が出てしまう。
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